【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

(思い出しただけでこんなになってしまう。こんなことじゃ、アンリエッタやギルベルト様に迷惑をかけてしまうわ)

ティンナール伯爵家はヴァネッサのトラウマそのものだ。
十七年間、植えつけられた恐怖や絶望は簡単にヴァネッサの中から消えることはない。
体温がどんどんと下がっていくような気がした。
指先が冷えてうまく動かせない。

(うまく気持ちを切り替えないと……でもっ)

今はアンリエッタが目の前にいる。
折角、前向きないい雰囲気になっていたのにヴァネッサのせいで台無しになってしまった。


「……アンリエッタ、ごめんなさい」

「ヴァネッサ……」

「気持ちをっ、強く持たないと……ダメよね」


ヴァネッサはアンリエッタを心配させないように無理やり笑顔を作った。
口角が引き攣ってピクリと動く。震える腕を隠すように後ろに回した。
だけど信じられないほどに胸が痛くて泣き叫び出してしまいそうだ。
アンリエッタはヴァネッサの表情を見て首を横に振る。