【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

ベッドから顔を出してこちらを見ている少女が誰なのか考えていると、ノックの音と共に誰かが部屋の中へ入ってくる。


「──アンリエッタ!」

「大変……お父様だわ!」


そう言った少女は焦ったように椅子を降りた。
可愛らしいドレスと真っ白なレースがサラリと揺れた。
どうやら部屋の中に入ってきたのは白衣に眼鏡をかけたギルベルトのようだ。
髪がぴょんと跳ねている部分があり、なんだか可愛らしいと呑気に考えていたのだが……。

(アンリエッタ……? アンリエッタって、どこかで聞いたことある名前だわ)

ヴァネッサの意識が次第にはっきりとしてくる。

(ギルベルト様がお父様ということはもしかして……あのアンリエッタ!
?)

アンリエッタ、ギルベルトの一番目の妻との子どもである。
ヴァネッサは悲劇の継母として彼女の目の前で自害。
そのまま強烈なトラウマを植え付けてしまうのだ。
ヴァネッサが亡くなったことをきっかけにアンリエッタとギルベルトの親子の仲はどんどんと崩れていった。

天使のように可愛らしいアンリエッタが、将来悪役令嬢になるなんて信じられない気分だ。


「患者の部屋に勝手に入るなと何度言ったらわかるんだ」

「患者なんかじゃないわ。わたくしの……新しい、その……」


もじもじとしているアンリエッタはやはり天使のように可愛らしい。