【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

ヴァネッサは差し出された包み紙を持ったまま硬直していた。
ギルベルトに薬なのかと問いかけようとするが声が出てこない。
口をパクパクさせていると、彼の真っ赤な瞳が細まる。
ヴァネッサは大きく肩を跳ねさせた。

(恐怖を感じると体が全然思い通りに動かないのね。どうしたらいいのかしら)

ギルベルトは立ち上がり「また来る」と言い残して去って行ってしまった。
彼が扉から去って行き、ヴァネッサは無意識に強張っていた体から力を抜いた。

(……わたしの反応をよく見て気遣ってくださっているのね)

と、同時にギルベルトが置いていった包み紙を開く。
匂いを嗅いでみるが、なんの匂いもしない。
ほんのりと草のような香りもしなくもないが、刺激臭などはまったくなかった。
恐る恐る粉を手に取り、ペロリと味を確かめてみるが舌が痺れたり痛みがあることもない。

(も、もしかしてこれを飲み続けて人体実験を? 体調の観察をするつもりなのかしら。それにしては扱いが手厚いわよね。まるで客人のようだわ……実験をするのなら牢の中に入れたっていいはずなのに)

ヴァネッサはスープを半分ほど飲んでから、ギルベルトの言われた通りに薬を水で流し込んだ。