【完結】悲劇の継母が幸せになるまで


「無理をさせてすまない。頷くか首を横に振るかでいいから答えて欲しい」

「……!」

「満足な食事を与えられなかったのか?」


二人の間に沈黙が流れている。
ティンナール伯爵はギルベルトに逆らうな、とも言ったことを思い出してヴァネッサは彼の問いに静かに頷いた。

(大丈夫……ここにティンナール伯爵はいないわ)

ギルベルトは「つらいことを聞いてすまなかった」そう言って、ヴァネッサの涙をハンカチで拭う。
そこで初めて自分が泣いていることに気がついた。


「すまない……」


ギルベルトの悲しげな表情を見て、ヴァネッサは首を横に振った。
彼が悪いわけではないからだ。
優しく涙を拭ってくれたギルベルトが噂のように悪い人物には思えない。
むしろヴァネッサを心配して、気にかけているように見えた。
けれどそれと同時に侍女たちとエレーヌの言葉が頭を過ぎる。

『シュリーズ公爵は表舞台に一切出てこない。前妻もみーんな死んでる。アンタも結婚するんだからそうなるに決まっているわ』
『シュリーズ公爵はアンタを人体実験するために大金を払って買ったの! 今からどんな苦痛が待っているのかしら。体を引き裂かれる? 毒で苦しむのかしら』