【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

「そのまま食事を続けてくれ。それから今からいくつか質問をしたい。答えられる質問にだけ答えてくれ」

「…………え?」

「いつから咳が出るようになった? よく出るのは朝か? 夜か?」

「……!」

「他の症状はあるのか? 肌の赤みについてだが、主に痛むのか。それとも痒みが強いのだろうか?」


ヴァネッサはこのやり取りに懐かしさを感じていた。
毎朝する医師との会話、そのものではないか。
ギルベルトは公爵で貴族のはずだ。
それに先生と呼ばれることも拒絶している。

(ギルベルト様は医師なのかしら……?)

前世と同じやりとりに安心感を覚えて、ヴァネッサは問いかけに答えるために口を開く。


「咳は……幼い頃から。夜から早朝にかけてが多いですが常に。高熱もよく出ていて……肌はずっと痒みを伴います」

「なるほど。食欲は?」


ギルベルトはヴァネッサの答えを素早く書き込んでいるではないか。


「食欲は……ありましたけど、あまりその……」


ティンナール伯爵家でのことを思い出すとガタガタと震える手。
『シュリーズ公爵家では何も言わずにいるだけでいい。ここであったことは絶対に話すんじゃない……! わかったなっ!?』
ティンナール伯爵の脅しとも呼べる言葉がヴァネッサを支配する。
話したいのに話せない不思議な感覚だった。
ヴァネッサの奥深くに植え付けられた恐怖はなかなか消えはしないようだ。