【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

(たとえ人体実験されたとしても、ティンナール伯爵邸にいるよりはマシだわ。あのままあそこにいたらいつかは死んでしまっていたもの)

そう思うと怖くなるが怪我を手当てしてくれたり、温かい食事を用意してくれた。
ギルベルトのことはまだ怖いが、ヴァネッサを邪険にする様子もない。
ヴァネッサは恐る恐るギルベルトに問いかける。


「あの……なんと、お呼びすれば?」

「何でもいい」

「では、ギルベルト様……と」


ヴァネッサが彼を見上げながら名前を呼ぶと彼の目が大きく見開かれた。


「ああ……それでいい。それで食事はとれそうか?」

「あ……」


ヴァネッサは落ちたスプーンを見ていた。
粗相をしてしまったと、慌ててスプーンを拾おうとするとするがギルベルトに止められてしまう。


「レイ、新しいものを」

「はい、ただいまお持ちいたします」


いつの間にかギルベルトの後ろに控えていたレイは新しいスプーンを持ちに行った。
ギルベルトは近くにあった椅子に腰掛けて、テーブルにあった紙と羽根ペンを手に取る。
ヴァネッサとギルベルトの間にはかなりの距離がある。

(気を遣ってくれているのかしら。それとも近づきたくないとか……? ギルベルト様の考えがよくわからないわ)

ヴァネッサが今から何をされるのか警戒していた時だった。