【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

長いシルバーグレーの前髪をわけた彼の仕草は初恋のレン先生にそっくりだと思った。
いつの間にか恐怖は消えて、自由に体が動くようになる。

(わ、わたしってシュリーズ公爵のことをなんて呼べばいいのかしら……)

考えても誰も教えてはくれないし、結婚した後のマナーは習っていない。
とりあえず間違えてもいいかと、ジェフたちの真似をして呼んでみることにした。


「だ、旦那様……あの……」

「君と形式上は結婚してはいるが……そのように思わなくていい」

「え……」

「無理にそう思わなくていいと言っているんだ」


ギルベルトの冷たい言葉を聞いて胸がズキリと痛んだ。

(形式上……そう、よね。わたしと会ったことすらないのに結婚をしたんだもの)

シュリーズ公爵はヴァネッサを妻だと認めていないということだろうか。
それも仕方ないことだろう。
彼は大金でヴァネッサを買ったと聞いた。
妻ではなく所有物という意味かもしれない。