【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

そのまま咳が出て治ってを繰り返していた。
いつものように口元を押さえながら、痒みに耐えていた。
ボーッとしつつ、ヴァネッサはベッドから窓を眺める。
暖かい太陽の光がヴァネッサを包み込むように照らしていた。
ヴァネッサが眠っている間に雨は上がったらしいが今の時間はわからない。
いつもなら使用人として人が嫌がる仕事を押し付けられていたため、休む暇もなかった。
体調が悪く働けないと嫌味ばかり言われていたし、窓がない物置きに光は届かない。

(あたたかい……こんな穏やかな気持ちはいつぶりかしら。何だかとても幸せな気分)

前世の記憶とヴァネッサの記憶とがせめぎ合い、混乱している部分もあるが、これから整理していけばいいだろう。
瞼を閉じて、緊張と恐怖で脈打つ心臓を落ち着かせるように心の中で呟いた。

(もう……大丈夫なんだ。ここは安全……あの人たちはいない)

ここにはヴァネッサを故意に傷つけようとする人たちはいないことだけは確かだ。
気持ちが落ち着いてくると強張っていた体から力が抜けていく。
ベッドに座りっぱなしでいるのもしんどくなり、ゆっくりとベッドに横になった。

瞼を閉じて呼吸に集中すると胸の痛みや息苦しさはなくなっていく。
意識が薄れていく中、ヴァネッサの頬を次々と温かい涙が伝っていった。