【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

(本来、ヴァネッサは混乱して大暴れするんでしょうけど……)

心臓が飛び出してしまいそうなくらい脈を打っている。
三人が去るまで息をすることすら忘れていたのだ。
そう思うと早々に去ってくれてありがたいと思うべきだろうか。

(まるで自分の体じゃないみたい。無意識に反応してしまうのは、ヴァネッサのトラウマがあるからかしら……)

ドキドキする胸を押さえながら、ヴァネッサは辺りを見回していた。
シンプルな部屋は調度品も置いておらずサイドテーブルだけ。
棚にも鍵がかかっていて取り出せないようになっている。

(徹底しているのね……)

恐らくヴァネッサの現状を見て、何も置いていない部屋に通したのだろう。
精神科に勤めていた看護師さんに少しだけ聞いたことがあったため、そうではないかと思ったのだ。

馬車から降りたヴァネッサはジェフと男性に話しかけられてパニックになってしまう。
どうすればいいかわからずに『殺されるくらいなら』と思い、自らの喉元に尖った傘を突き立てたのだ。
この状況ではまた繰り返さないとは言いきれない。
だからこのように対処したのかもしれない。
実際に物語のヴァネッサは、食事のナイフを喉に突き立て自らの命を断ってしまった。