ティンナール伯爵家についても雰囲気は最悪だった。
エディットは最悪なことに三日後にはお茶会に招待されていることを思い出す。
そこで王家御用達のブティックでドレスを買ったことを自慢しようと思っていたのだ。
だが、実際はどうだろうか。
噂好きな令嬢たちはこのことを知らないはずがない。

(仮病を使って逃げる……? でもこれからずっと怯えて過ごすなんてごめんだわ。今まで通り堂々としていれば大丈夫よ。何事もなかったように振る舞って流しましょう)

心臓は緊張と焦りから忙しなく動いていた。
こんな気持ちになったのは生まれて初めてだった。

三日後、お茶会に向かったエディットを待ち受けていたのは地獄だった。


「エディット様は王家主催のパーティーに着ていくドレスは決まりまして?」

「ま、まだ迷っているのよ……それよりも」


いつもはエディットもドレスやパーティーの話を長々とするのだが、今回ばかりは別。
さっさと話題を変えようとするものの遮られてしまう。


「わたくしは素晴らしいドレスを買えたわ。あのブティックで……」

「……!」

「エディット様もいらしたけど、買えなかったのよねぇ?」

「な、何を言って……」