【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

叶わない夢だと知っていたけれど結婚もしたいし、子どもも欲しいと思っていた。
それもすべてを諦めるしかなかった。
病気になったことで失ったこともあったけれど、得たものもたくさんあった。
周囲への感謝、命の大切さ。
支えられてここまで生きていられたことも。
生きることへの尊さや喜びもそうだ。

(わかったわ、神様。次はわたしが誰かを愛して守る番。そういうことなのね……!)

明るい気持ちでいたヴァネッサは改めて小説のことを思い出す。
毎日、たくさんの小説や漫画を読んでいたため、本編の内容はうろ覚えだ。
流行りのロマンス小説だったように思う。
ヒロインとヒーローが結ばれて、それから悪役であるアンリエッタが断罪されてしまう。
シュリーズ公爵はその責任を取り爵位を譲り、表舞台から去ってしまう。

その小説の番外編。
アンリエッタの過去に出てくる病弱で両親に愛されず死んでしまったヴァネッサのことだけはよく覚えていた。
出番はわずかで多くは語られることはなかったが、凄惨な過去は読者に大きな影響を及ぼしたそう。