「ウフフ、ここで買い物できるなんて夢みたいだわ! さすがお父様っ」
「可愛いエディットのためだ。無理もできるさ」
「……素敵ね。さすが王族御用達のブティックだわ」
話している内容なんて何も頭に入ってはこなかった。
その声を聞いただけで、誰が話しているのかがハッキリとわかってしまう。
全身が硬直して、鳥肌がブワリと立った。
(どうして……ここにいるの?)
咄嗟に俯いたヴァネッサだったが、手のひらが汗ばんでしまい震えているのがわかった。
(大丈夫よ。わたしはもう関係ない……赤の他人に怯える必要なんてないわ)
心は強く保っているはずなのに、体が言うことを聞いてくれない不思議な感覚だった。
このまま通り過ぎるのを待っていればいい、そう思っていたのに現実はそううまくはいかないようだ。
「……え? 嘘でしょう?」
エディットの視線を感じてヴァネッサは肩を揺らした。
反応をしてしまったことで、ヴァネッサだとわかってしまったらしい。
ティンナール伯爵と夫人もこちらを見て、驚愕の声を上げているではないか。



