「そこで体勢を崩さない」
「はい! ゴホッ……」
「少し休憩いたしましょう。十分後に再開しますよ」
「あっ……」
「勘違いしないでくださいませ。喉が渇いただけですわ」
「ありがとうございます……!」
ヴァネッサの体調を考えつつ動いてくれる講師には感謝していた。
厳しい中にも優しさが見える。
一番ありがたいと思ったのは変にヴァネッサに対して遠慮をしたりしないこと。
もちろん体調が悪い時は別だが、ヴァネッサの境遇を知っても態度を変えることなく、事実を伝えてくれた。
『この歳ではこのレベルは当たり前よ』
褒められて甘やかされるよりはずっといい。
何故ならできないままで終わりたくなかったからだ。
やったらやった分だけうまくなる。勉強したら勉強した分だけ知識がつく。
それは今までやりたくてもできなかったことだ。
だからこそやる気が止まらないではないか。
ひたすら動いていると、とにかくお腹も空いてくる。
ベッドに寝ているだけの時とは大違いだ。
量はどんどんと増えていき、今ではパンをおかわりするようになった。
骨ばっていた体も徐々に丸みが出てきたような気がした。
とにかくこうして動けることが幸せでたまらない。
ヴァネッサは夢中だった。



