【完結】悲劇の継母が幸せになるまで


(もし……エディットたちが言っていることが本当だったら?)

今までヴァネッサは何のために生きてきたのだろうか。
緊張や喉の渇きから咳き込んでいると、エディットは『まったく、うるさいわ』と嫌な顔をした。
ヴァネッサはなんとか咳を我慢するために唇を閉じる。


『うるさい咳をやっと聞かなくていいし、鬱陶しいやつの顔を見なくていい……なんて幸せなんでしょう!』

『コホ……こほっ』

『準備が終わったら、さっさと出て行きなさい! ここにアンタの居場所はないのよ?』


ヴァネッサは侍女に引きずられるようにして部屋を後にする。
行きたくない、その言葉も息苦しさから声が出なかった。


『でも本当に誰にも愛されずに最後まで惨めよねぇ』


エディットの呟くように言った言葉がヴァネッサの心を抉る。
愛されている彼女にはヴァネッサの気持ちを理解することはない。

投げ捨てられるようにして廊下に出た。
フラフラと壁に寄りかかりながら咳き込んでいると、いつの間にか両親がヴァネッサの前に立っていた。
ヴァネッサは二人に助けを求めるように手を伸ばす。

(助けて……お願い、行きたくないっ!)

すると父はヴァネッサの髪を掴んで引き上げた。