「――伊差くん、もしかして、わたしのこと好きなの?」
じゅわ、という音が聞こえてきそうなほど赤く染まった頬が、否定はしないで、おもむろに、小さく縦に揺れた。
自分がしてしまったとんでもない質問よりも、言葉を伴わないその答えのほうが、圧倒的に衝撃だった。
「文字に置き換えるしかない不定数の値を、一生懸命ノートに書きだして、定数として求めようとしてる姿を見たときに」
伊差くんが意味不明なことをしゃべっている。
「こんなに真剣に数字と向きあってる人、なかなかいないと思ったんだ」
これじゃ、“したがって”では結べない。
けれど、証明できてしまったので、そう言うほかない。



