あなたの姫は私だけ

「離して...やめて...」

「うるせぇな!黙ってついこい!」


怖い...無理無理無理、こんな人から逃げるなんて絶対無理だ...

半ば諦めていた。


もうどうでもいい、どうなってもいい

私がいなくなれば、お母さんは喜ぶだろうし...


死ぬのかな、私...


なんて、考える自分はどうかしてる。

もう一度でいいから、お母さんに抱きしめてもらいたかったな...


と、後悔しているときだった。


「その子、離してもらえますか?」

「は?俺が先だったんだけど?」

「この子、俺の姫なんですよ」

「知らねぇよ」


どこかで聞き覚えのある声...

優しい声...でも、怒ってるのはわかる。


「離せって言ってんだろじじい」

「なっ!何様だ!」

「何様でもねぇよ。その子は俺の姫だ、離せ」


そう叫んだあと、私はなぜか助けてくれた人の腕の中にいた。


「他あたれ」

そう言って彼は、私を支えながらゆっくりと歩き出した。