私の世界には、色というものが存在しない。


何もかも白黒でしかない。

唯一わかるのは、濃さぐらいだ。


だから、食事の美味しさも、全く感じられない。

豪華な朝食、ビュッフェ、そして高級な国産牛だって。

何もかも。


裕福な家だから、何もかも試した。

味がわかる食べ物はないか。

色がわかるものはないか。


探しに、町中を歩いたりもした。

もちろん、成果はなし。




でも、私の体に異常はなかった。

病院に行って隅々まで検査した。





────けれど、何も分からなかった。




お医者さんは、私の意識に問題があると言った。


考え方、そして概念。


人と違うその考え方が、この症状を引き出していると。



それを聞いて、何故か絶望した。

何故だろうか。


考え方を否定されるのが辛かったのだろうか。

それすらも覚えていない。