君の心は奪えない




「羽月と知り合って、もう1年か」
「どうしたの、しみじみと」


ケーキとココアの準備をしながら、のんびりと話す春義君。



「んー、いや。昨日羽月が奪い返した宝石の本当の持ち主がさ、羽月のおじいさんに似てたから思い出して」
「……そっか」
「おじいさんがきっかけで、羽月はうちに来たもんな」


そう。
今あたしは春義君のもとで怪盗をしているけど。

元々は、依頼者だ。


「泣きながらここに来た羽月の姿は忘れられないよ」
「ここが怪盗の根城ってことは知らなかったけど、ここにきてよかったよ」



『俺でよければ力になるよ』


カウンターにつっぷして泣いているあたしに、そう声をかけてくれた春義君。
春義君に救われて、あこがれて。
あたしは怪盗になったんだ。