君の心は奪えない


眠たい眠たい給食直後の数学の授業をなんとか受け(6割くらい寝てた)、まだぼんやりとする頭をふるふると左右に振る。


「次は国語……また眠たいやつ……」
「今のお前からしたら、どんな科目でも眠たいだろ」


机に頬杖をついて、あきれたように和泉が声をかけてきた。


「おっしゃる通りでございます……ふあぁ」
「なんでそんなに眠たいんだ。たまにあるよな、普段授業中に寝ないお前が、どんなに抗っても睡魔にかてないこと」
「人間ですもの」
「……何してるのか知らねーけど、無理すんなよ」


頬杖をついていない、左手を伸ばして、あたしの頭をくしゃっとなでる大きな手。
あたしはこの手がとても好きだ。


「あっ、井田が困ってる」


黒板を消している花音ちゃんが、上の方のチョークを消せず跳びはねている姿を見つけた和泉は、そそくさとあたしの頭から手を離して花音ちゃんのもとへ行った。