君の心は奪えない



いや、そんなことは無かったはずだけど……。
クラス替えがあった時でも、自分から積極的に新しいクラスメイトに話しかけに行ってる姿は見たことがない。

今はよそいきモードだから?


明らかにあたしに向かって話しかけている状況。
……無視できない。



「私も、苦手です。初めての場所に行くのも、初めて会う人と話を弾ませるのも」
「へえ。なんか、意外です」
「意外?」


なんでそういうふうに思うんだろう。
過去、別のパーティーか何かで“桃華さん”に会ったことがあるのかな。



「俺の友だちに、すごいコミュニケーション能力高いのがいるんですけど。あなたの雰囲気が、その子に似ているから」



その言葉に、あたしはびくりと肩を少し跳ねさせてしまった。

だめだめ、動揺を見せたらいけない。



「そうなんですね。君は……高校生?君くらいの年齢で、コミュニケーション能力が高いなんて羨ましいな」
「いや、中学生です。その友だちは女の子なんですけど……本当に、すごいんですよ」
「へえ」
「人のこと、よく見ていて。困ってる人がいたら放っておけないみたいで、すぐに手を貸しに行く」