君の心は奪えない




『うっざ、何まじめぶってんの!』


悪ふざけの延長でやってきた、クラスメイトの男子に、あたしは突き飛ばされた。
それがまた、直前まで盛り上がって大騒ぎしていたいたせいか、力加減ができていなかったみたいで。

あたしはバランスを崩して、後ろに倒れ、そのまま後頭部をピアノにぶつけて出血するという大騒ぎに発展した。


『羽月ちゃんっ!!!』
『羽月!おいっ、先生呼びに行けよ!!』


花音ちゃんの涙混じりの、あたしの名前を呼ぶ声と。
和泉の怒鳴り声は鮮明に覚えている。

痛みで視界が涙でにじんで。
涙のフィルターの向こうで、和泉が悔しそうに下唇をかみしめていたのも、覚えてる。


『助けれなくて、ごめん。羽月みたいな、勇気がなくてごめん』

『もう二度と、羽月がこんな目にあわないように助けるから』


……あ、れ……。
なんか、今、大事なことに気づいたような……。