君の心は奪えない



小学6年生、合唱大会の前日だった。

花音ちゃんはピアノ奏者で、歌合わせを今からしたいっていう時だった。
でもなかなかクラスメイトの息が合わなくて。

いつになっても練習ができず、花音ちゃんも困った顔をしていたんだ。

ひとり、ピアノの前に居心地が悪そうに座っている花音ちゃんがあまりにも可哀想で。
あたしの前後左右で、整列しながらも大騒ぎしているクラスメイトに腹が立って。

ピアノのところでひとり、皆が落ち着くのを待っている花音ちゃんのもとへいった。


『花音ちゃん、しんどいよね。あたし、職員室まで先生呼んでくるよ』
『ううん、いいよ……私がもう一回大きい声で、ピアノと歌を合わせたいって言ってみる』


そう言って、花音ちゃんは皆に呼び掛けてみたけど、それでもやっぱり皆にその声は届かなくって。


『……っ、もう!明日本番なんだから、ちゃんとしようよ!』


しびれを切らしたあたしが、そう声をあげたら。