「宝石を盗まれたのはばあちゃんなんだ。死んだじいちゃんにもらった宝石で。盗まれてからずっと気落ちしてる」


「宝石の種類は?」


「俺も詳しくないし、正式名称じゃないかもしれないけど……【レッドリリィ】って言ってた。見せてもらったことあるけど、レッドっていうよりは……」


和泉が盗まれた宝石のことを話し始めて、はや数秒。
店内の空気が緊張感に包まれた。

あたしも背中に冷や汗が流れ始める。


【レッドリリィ】って、それは……。


「赤というよりも、赤紫色の宝石だね。まさか、この国に所有者がいたとは……」


春義君も、眉間にしわを寄せて、珍しく緊張を隠しきれていない。

怪盗業は、普段耳にしないような宝飾品や美術品を目にすることがままある。
でも、今彼が口にした宝石は……。