怪盗が最後に盗んだもの

「フローレンスは知らないと思うけど、僕は小さい頃から君を知っているんだ。屋根裏にいた君をこっそり見たことがある。その時からずっと思っていたんだ。すごく綺麗な子だなって」

怪盗シャハルの言葉にフローレンスの顔に熱が集まる。人から褒められたことなど一度もなかったのだ。それと同時に眠気が襲ってくる。

「今日は刑事に変身して演技したり、色々と疲れたでしょ?眠っていていいよ。家に着いたら僕がキスで起こしてあげるから」

「フフッ……。何ですかそれ……」

フローレンスは笑った後、ゆっくりと目を閉じる。数秒後には寝息が怪盗シャハルの耳に届いた。

「おやすみ。僕の眠り姫」

怪盗シャハルはそっと微笑み、やっと手に入れることができた宝石にそっと口付けを落とした。