幼なじみは離れない      【マンガシナリオ】

〇駅・ホーム(夜)
   電車を待つ杏奈。
   電車が来て止まる。
   杏奈が乗り込む。

〇電車・車内
   混雑している車内。
   杏奈がつり革につかまっている。
   隣に夏生がいる。

杏奈「どうして、そこにいるのよ」
夏生「どこにいたっていいじゃん」
杏奈「邪魔よ。どっかいってよ」
夏生「この状況で?」
   と周りを見渡す。
   会社員らしい人たちが多い。

杏奈「えっ、こんなに混むの?」
夏生「この時間帯はだいたいこんなもんだよ」
杏奈「知らなかった」

   夏生が杏奈を見ている。
杏奈「………仕方ないわね」
   夏生が笑いを抑えるように肩がこまかく震える。
杏奈「ちょっと、何がおかしいのよ」

〇駅・ホーム(夜)
   電車が止まる。
   乗客が乗り込む。

〇電車・隣の車両・車内(夜)
   混雑している。
   伏見と綾乃が並んで立つ。

   杏奈の笑い声が聞こえる。
   伏見が隣の車両を見る。
   伏見がムッとする。

綾乃「どうしたの?」
伏見「何でもない」

   綾乃が隣の車両の杏奈に気づく。
   奥にいる夏生が見える。

綾乃「あ、今朝の………」
   と伏見を見る。
   ピーンと来る綾乃。

綾乃「いいの? 声をかけなくて」
   怒った顔のまま、
伏見「いい」

綾乃「(からかうように)怒った顔こわーい」
伏見「………悪かった」
綾乃「いいわよ。気にしてないから」

   綾乃が杏奈をもう一度見る。

〇同・車内(夜)

杏奈M「忙しくて、何時の電車で帰るか聞くの忘れた!」
   と視線だけで周りを見る。

杏奈M「竜ちゃんを探したいけど、(雪平を見て)今朝みたいにからかわれそうだし……」

   電車が大きく揺れる。
   杏奈が「きゃぁ」と倒れそうになる。
   雪平が杏奈を支える。

〇隣の車両・車内(夜)
   雪平が杏奈を片腕で抱き寄せるところを見る伏見。
   何気なく振り向いた杏奈と目が合う。
   反射的にそっぽを向く伏見。

〇電車・車内(夜)
杏奈M「え? 今、目が合ったよね。っていうか、隣の車両だったら会いに来てくれればいいのに、どうして?」
   と隣で美人OLを見て「キレーだな」と呟いている雪平をみる。

   ×  ×  ×
(フラッシュ)
   電車が揺れて倒れそうになる杏奈を支える雪平。
   ×  ×  ×

杏奈M「もしかして、あれを見られた?!」
   スマホを取り出す。
   着信がある。

   文面「しばらく部活で忙しいから、一緒に登校できない」

   隣の車両を見ると伏見も綾乃も見えない。
杏奈M「どこ?」

〇隣の車両・車内(夜)
   ドアの前に伏見と綾乃。
   電車が止まり、降りる二人。
   窓に顔をくっつけ見ている杏奈。

〇電車・車内(夜)
   伏見が杏奈の奇行に首を傾げる。
   電車が動きだすとホーム側のドアに行き、二人を見ている。

〇駅・ホーム(夜)
   乗降客に紛れて伏見と綾乃が改札口に向かって歩く。

綾乃「この駅じゃないよね。降りる駅」
伏見「ちょっと寄りたい店があって」
   綾乃が「ふーん」と伏見を見る。

伏見「何だよ?」
綾乃「何でもない。それより、買い物付き合ってもいい」
伏見「好きにしていいよ」
綾乃「好きにする」
   と楽しそうに改札を出る。

〇車両・車内(夜)
   電車が駅を離れる。

杏奈M「どうしよう。竜ちゃんに嫌われちゃったぁ」