幼なじみは離れない      【マンガシナリオ】

〇電車(夕)
   夕陽に照らされて電車が線路を走って行く。

〇同・2両目・車内(夕)
   伏見が吊革につかまったまま周りを見る。
   一つ隣の車両にいる杏奈がバッグで顔を隠す。

〇同・3両目・車内(夕)
   杏奈が伏見のいる車両に背中を向ける。
杏奈M「なぜだろう? 今の気持ちで竜ちゃんに会っちゃいけない気がする」

×  ×  ×
(フラッシュ)
   黒板の前、夏生がチョークを持ってニヤッと笑いかける。
×  ×  ×

   杏奈は首を横に何度も振る。
杏奈「なんであんな奴、思い出すの?」
   とスマホを取り出す。

DMで「ごめん。今日、遅くなった」
   と送信する。

   隣の車両の伏見がスマホを見ている。

   杏奈のスマホが鳴って、「気をつけて帰れよ」
   杏奈がほっとした後、ハッとする。
杏奈M「どうして、私、ホッとしているの?」

   と伏見を見ると隣に同じ学校の制服を着たゆるふわな長い髪が夕日に当たって金髪に見える胡桃沢綾乃(15)が隣に立っているのが見える。
   杏奈は驚いて呆然として見ている。

〇花園家・外観(夕)

〇同・杏奈の部屋(夕)
   電気が消えたまま。

   ベッドの上で仰向けになる杏奈。
杏奈M「あの子は誰なんだろう? 聞けば答えてくれると思うけど………」
   とベッドヘッドに置いてあるスマホを手にする。

杏奈M「……なんだろう? 負けてるような、すごくひきょうな人間になった気がする」
   と横になり目を閉じる。

〇(夢の中)電車・車内
   誰もいない電車内、杏奈一人がつり革につかまっている。
杏奈M「遅刻した。いつもと違う時間で誰もいないじゃない」

   ふわっといい匂いがする。
   杏奈が横を向くと伏見と綾乃が楽しそうに笑いあっている。
杏奈「竜ちゃん!」

〇花畑
   伏見と綾乃が手に手を取り合って花畑の中を楽しそうに笑いながら歩いて行く。

〇電車・車内
   杏奈は二人に向かって手を伸ばす。
杏奈「待って! 竜ちゃん!! 竜ちゃん」

〇(夢が終わる)花園家・杏奈の部屋(朝)
   目覚まし時計が鳴っている。
   杏奈がガバッと起きあがる。

杏奈「夢……(周りを見る)」
   チラッと窓の外を見る。
   隣の伏見家が見える。