幼なじみは離れない      【マンガシナリオ】

〇水族館・売店・店内
   伏見と高橋、山中、香取が話している。
   杏奈が気づかれないように棚に隠れる。

山中「簡単に言うな」
香取「他人事だからな」
伏見「行動しなきゃ始まらないだろう。高橋」
高橋「そうだけど」
   とうつむく。

   杏奈の顔が青くなる。

杏奈M「『行動』って告白するってことだよね」

   ×  ×  ×
(フラッシュ)
〇電車・車内
   伏見と綾乃が並んで座っている。

綾乃「やっぱり、来なければよかったかも」
伏見「そんなこと言うなって楽しみにしてたんだから」

   ×  ×  ×

杏奈M「今日、ここに来たのって、私と別れて綾乃さんに告白して付き合うつもりなの?」

山中「頑張れば大丈夫だって」
香取「簡単にいくか?」
高橋「あの雪平ってヤツのこと好きなんじゃ?」
伏見「そんな雰囲気じゃないな」
高橋「告白したらOKもらえると思うか?」

杏奈「!!!」

   杏奈がショックで口を抑える。

伏見「告白する前からあきらめ………」
   杏奈が逃げ出す。
   伏見が杏奈に気づく。

伏見「杏奈!」
   高橋たちもかけて行く杏奈を見る。
高橋「どうしたんだろう?」
山中「いるの気づかなくて置いて行かれたと思ったとか?」
伏見「仕方ない。追いかけるから、頑張れよ」
   と走って追いかける。

〇通り
   杏奈が走っている。
   後ろを追いかける伏見。
伏見「待てって! みんな待ってるぞ」

杏奈M「戻れないよ。竜ちゃんに言われる言葉を考えただけで………」

   ときつく唇をかむ。

〇公園
   ブランコ、ジャングルジム、滑り台、砂場などがあり、遊んでいる子どもたちがいる。
   杏奈が突っ切って行こうとするのを伏見が止める。

伏見「どこ行くんだよ」
   息を切らす伏見。
   杏奈がうつむいたまま黙っている。
伏見「杏奈?」
杏奈「………やめよう」
伏見「なにが?」
杏奈「………」
伏見「つまらなかったか?」
   杏奈が何度も首を振る。

伏見「綾乃に何か言われたのか?」
   杏奈が首を振る。

伏見「知らない奴と一緒でイヤだったとか?」
杏奈「そうじゃなくて……私よりも綾乃さんがいいんでしょう?」
伏見「何が?」
   何を言われているのか分からなそうな伏見。

伏見「(頭をかきながら)あーやっぱり、別々の高校行くとダメなのかな?」
   杏奈の目からぽろぽろと涙が溢れ出す。

杏奈M「そうだよね。当然だよね。誰だって私よりも綾乃さんを選ぶよね」

   慌てる伏見。

伏見「どうした? 悪いものでも食ったのか?」
杏奈「違う」
   伏見が腕を組んで考え込む。

杏奈「さっき、みんなと話していたの聞こえたよ。綾乃さんと………」
   ハッとする伏見。

伏見「まさかとは思うが、オレが綾乃を好きだと勘違いしているのか?」
杏奈「そうだよ! (まじまじと伏見を見て)………勘違い?」
伏見「あのな。(呆れる)本人には言うなよ」
   と周りを見てから、

伏見「綾乃とは友だちだ。それ以上でもそれ以下でもない。(ため息をつく)正直、一緒にいると堅苦しくて、しんどい」
   杏奈があ然として伏見を見る。

伏見「綾乃も、自覚があるからそれを直したくて、好き勝手に遊んでいるところを見ても文句を言わないようにしたいってことで一緒に来たんだ」

杏奈「でも、さっき『頑張れば』って言ってたのは?」
伏見「あれは、片思いしてんだよ。高橋が」
杏奈「え?」
伏見「言えないで悩んでいるみたいだから、玉砕覚悟で行けってけしかけたんだが………」
杏奈「………玉砕は覚悟なんだ」
伏見「そうでも言わないと行動しないで終わりそうだからな」
杏奈「確かに、そうだけど心の準備ができるまで待ってても………」
伏見「お前が言うのか? 告白しようとしてできなかっただろう」

   杏奈が走馬灯のように中学のとき、バレンタイン、誕生日、修学旅行とことごとく告白できなかったことを思い出す。

杏奈「知ってたの?」
伏見「ああ」
杏奈「だったら、言ってくれれば………」
伏見「言おうとすると、逃げたり、邪魔が入ったりでタイミングが悪かったんだ」
杏奈「じゃあ、ずっと両想いだったってこと?」
   と上目づかいで伏見を見る。

   伏見は杏奈の頭を片腕で抱える。
伏見「もう、オレを振り回すなよ」
   杏奈が見上げる。

   伏見が横を向く。
伏見「好きなのはお前だけなんだから」

   杏奈が耳を見る。
   伏見の耳は赤くない。
   杏奈がふふっと笑う。

伏見「なんだよ。おかしいのかよ」
   と腕を放す。

杏奈「違うよ。嬉しいんだよ」
   と顔の周りに花が散っているような笑顔。
   伏見が照れる。

伏見「じゃあ、帰るぞ」
   と手を伸ばす。
杏奈が「うん」と手を握る。
   手をつないで歩く2人の後ろ姿。

〇同・車内(朝)
   揺れる車内。
   杏奈と伏見が並んで立っている。
   杏奈と伏見が笑っている。

   すぐ横で雪平と綾乃が反対方向を向いて立っている。
 
〇電車(朝)
   線路の上を走っている。

杏奈の声「そういえば、告白はどうなったの?」
伏見の声「玉砕。慰めるの手伝ってくれ」
杏奈の声「いいよ」
                      完