〇水族館・女子トイレ
綾乃が視線を左右に動かして覚悟を決めた様に、
綾乃「私、ほんっとうに生真面目で、融通が利かないの!」
杏奈「?!」
綾乃「イヤな思いさせてない? 大丈夫?」
杏奈「う…うん。大丈夫だよ」
と両手を振って否定する。
綾乃「本当に?」
杏奈「うん。全然、気にしてないよ」
綾乃「あーよかった」
と胸をなでおろす。
杏奈M「綾乃さんって美人で、物知りで、何でもできそうなのに、こんなことで悩んでいるんだ。ちょっと、親近感持っちゃうな」
綾乃「中学の時にね。委員長をやっていたんだけど………」
〇(回想)中学校・外観
〇同・教室
ホームルーム中。
綾乃と雪平が座っている。
黒板に「胡桃沢20票 斉藤 3票 鈴木 2票」と書かれている。
担任が結果を見て、
担任「では、一年間、委員長を頑張ってくれ胡桃沢」
綾乃「はい」
と自信たっぷりに答える。
× × ×
生徒たちが机とイスを後ろに寄せてほうきで掃いたり、ぞうきんで拭いたりしている。
男女三人がしゃべってサボっている。
綾乃が空のゴミ箱を持って入って来る。
綾乃「ちょっと、今は掃除の時間でしょう。サボらないで」
男「うるせーな。ちょっとくらいいいだろう」
女「さっきまでやってたし」
綾乃「そしたら他の人の分を手伝って」
男「あー面倒くせぇ」
と廊下へ出る。
綾乃「あ、ちょっと、まだ、掃除中よ」
女「気に入らないなら優等生ちゃんが全部やっといてよ」
と男に続いて出て行く。
綾乃「先生に言うわよ」
雪平が入って来る。
雪平「何かあった?」
綾乃がムッとしている。
綾乃「何もないわよ」
と「ふん」とゴミを教室の後ろと持って行く。
雪平「おー怖!」
と肩をすくめる。
〇同・校庭
運動会の飾りつけがしてある。
ピストルの音がなり100メートル走が始まる。
生徒たちが走っている。
綾乃の声「ハチマキを忘れた!」
〇同・体育館・入り口・前
入り口の階段に体操着姿の京香が座っている。
目の前に綾乃がハチマキをしめて立っている。
隣にスミレが立っている。
京香が運動靴のひもを結んでいる。
京香「昨日、洗濯して持ってくるの忘れた」
綾乃「今日が運動会で忘れる?! 信じられない」
スミレ「競技に出る時だけ同じ色の人から借りればいいじゃん」
綾乃「ダメよ。そんなずるしちゃ」
京香「ずるって、大したことじゃないよ」
綾乃「先生に言って借りて来る」
京香「それが面倒なんじゃん」
綾乃「だって、無いままじゃいけないでしょう」
京香「だから、綾乃に言うのは止そうっていったじゃん」
と立ち上がってスミレを見る。
スミレが頷く。
スミレ「綾乃っていつもそうだよね」
と冷たい綾乃に視線を向ける。
スミレ「うん。融通が利かないっていうか、いつも、自分が一番正しいって」
綾乃「だって、間違っていないでしょう」
スミレが首を振る。
京香「何も、わかってない」
と二人で離れていく。
綾乃「ちょっと、待って………」
と手を伸ばすが、下を向いたまま動けない。
〇(回想終わり)水族館・女子トイレ・前
綾乃と杏奈が歩いてくる。
綾乃「あれ以来、ずっと口もきかないまま卒業しちゃって………」
杏奈「確かに真面目過ぎるかも……」
綾乃が一瞬、杏奈を見てがっくりと肩を落とす。
杏奈「あ、ごめんごめん。そんなつもりじゃなくて………」
綾乃「いいの。それを直すチャンスだと思って誘ってもらったのに、雪平くん、見てたらどうしても我慢できなくなって、嫌な思いしたでしょう」
杏奈「そんな。ルールは大事なことだから、悪いことじゃないと思うよ」
綾乃が尊敬の眼差しを杏奈に向ける。
綾乃「杏奈さんっていい人」
杏奈「そんなことないよ」
杏奈M「綾乃さんって美人で、頭もよくて、何でもできそうなのに、悩みがあるんだ。なんか、ちょっとだけ親近感あるかも」
〇同・通路
伏見、高橋、山中、香取たちが話している。
杏奈、綾乃が来る。
杏奈「ごめーん。時間かかっちゃった」
伏見「ああ、大丈夫、これから昼にしようって話してたんだ」
杏奈「あれ? 雪平くんたちは?」
伏見「サメのエサやりが見たいって、レストラン前で合流予定」
杏奈「そうなんだ」
綾乃「ここのレストランの名物は青いカレーで海をイメージしてジャガイモもヒトデの形をしているの」
みんなが綾乃を見ている。
綾乃「………あ、ごめんなさい。また、悪い癖が………」
と下を向く。
高橋「いや。選ぶ参考になるよ」
山中「うん。さすが胡桃沢さん」
香取「カレー好きだから頼んでみるよ」
杏奈M「前途多難そう?」
〇同・レストラン・店内
雪平、星羅、羽澄、麻衣が同じテーブルでカレー、サンドイッチ、パスタなどを食べている。
杏奈、伏見、綾乃、高橋、山中、香取が二つのテーブルをくっつけて、青いカレーを食べている。
中山がカレーを食べた後舌を出して青くなっているのを見て笑っている。
〇同・2F・イルカのショーの会場
円形のプールに客席が満席。
伏見、杏奈、綾乃、高橋、山中、香取、雪平、星羅、羽澄、麻衣が座っている。
イルカが音楽に合わせて泳いで飛び上がる。
水しぶきが飛んでくる。
みんな、キャーキャー言いながら楽しんでいる。
最後にイルカが客席近くで大ジャンプをして水しぶきが杏奈と綾乃にかかる。
曲が終わり、ショーの終了を告げるアナウンスがある。
綾乃「やだー。濡れちゃった」
綾乃の右肩から服の半分近くが濡れている。
杏奈「私も、どうしよう」
杏奈は左肩から同じように濡れている。
綾乃「着替えなんか持って来てないし……」
香取「売店で何か売ってなかったか?」
綾乃「そうだった。Tシャツとかトレーナーとか売ってるんだった」
と手をたたく。
綾乃「じゃあ、行きましょう」
杏奈の腕を掴んで立ち上がる。
杏奈「?」
綾乃「一緒に買いましょう」
と杏奈の腕を取って出口へ向かう。
杏奈「え、ちょっと待って」
〇同・売店・店内
親子連れやカップルが商品を見ている。
綾乃と杏奈がTシャツを見ている。
綾乃「これがいい。これにしない」
とかわいらしいピンクのイルカが描かれたTシャツを見せる。
杏奈「かわいい……けど、かわいすぎるかな」
杏奈M「あんなの来たら、絶対、小学生ってからかわれる」
綾乃「じゃあ、買ってくるわね」
杏奈「待って、お金」
綾乃「付き合わせたお礼をさせて」
杏奈「自分で買うから……」
レジの列に並ぶ綾乃。
杏奈M「デザインは自分で選ばせて!」
〇同・更衣室・前
杏奈がTシャツを着て出て来る。
杏奈「勢いに負けて着てしまった」
横にある鏡を見る。
年齢以上に幼く見える。
杏奈「濡れててもいいから着替えよう」
更衣室に戻りかける。
伏見の声「だいじょう……告白………するって………」
杏奈が振り返る。
綾乃が視線を左右に動かして覚悟を決めた様に、
綾乃「私、ほんっとうに生真面目で、融通が利かないの!」
杏奈「?!」
綾乃「イヤな思いさせてない? 大丈夫?」
杏奈「う…うん。大丈夫だよ」
と両手を振って否定する。
綾乃「本当に?」
杏奈「うん。全然、気にしてないよ」
綾乃「あーよかった」
と胸をなでおろす。
杏奈M「綾乃さんって美人で、物知りで、何でもできそうなのに、こんなことで悩んでいるんだ。ちょっと、親近感持っちゃうな」
綾乃「中学の時にね。委員長をやっていたんだけど………」
〇(回想)中学校・外観
〇同・教室
ホームルーム中。
綾乃と雪平が座っている。
黒板に「胡桃沢20票 斉藤 3票 鈴木 2票」と書かれている。
担任が結果を見て、
担任「では、一年間、委員長を頑張ってくれ胡桃沢」
綾乃「はい」
と自信たっぷりに答える。
× × ×
生徒たちが机とイスを後ろに寄せてほうきで掃いたり、ぞうきんで拭いたりしている。
男女三人がしゃべってサボっている。
綾乃が空のゴミ箱を持って入って来る。
綾乃「ちょっと、今は掃除の時間でしょう。サボらないで」
男「うるせーな。ちょっとくらいいいだろう」
女「さっきまでやってたし」
綾乃「そしたら他の人の分を手伝って」
男「あー面倒くせぇ」
と廊下へ出る。
綾乃「あ、ちょっと、まだ、掃除中よ」
女「気に入らないなら優等生ちゃんが全部やっといてよ」
と男に続いて出て行く。
綾乃「先生に言うわよ」
雪平が入って来る。
雪平「何かあった?」
綾乃がムッとしている。
綾乃「何もないわよ」
と「ふん」とゴミを教室の後ろと持って行く。
雪平「おー怖!」
と肩をすくめる。
〇同・校庭
運動会の飾りつけがしてある。
ピストルの音がなり100メートル走が始まる。
生徒たちが走っている。
綾乃の声「ハチマキを忘れた!」
〇同・体育館・入り口・前
入り口の階段に体操着姿の京香が座っている。
目の前に綾乃がハチマキをしめて立っている。
隣にスミレが立っている。
京香が運動靴のひもを結んでいる。
京香「昨日、洗濯して持ってくるの忘れた」
綾乃「今日が運動会で忘れる?! 信じられない」
スミレ「競技に出る時だけ同じ色の人から借りればいいじゃん」
綾乃「ダメよ。そんなずるしちゃ」
京香「ずるって、大したことじゃないよ」
綾乃「先生に言って借りて来る」
京香「それが面倒なんじゃん」
綾乃「だって、無いままじゃいけないでしょう」
京香「だから、綾乃に言うのは止そうっていったじゃん」
と立ち上がってスミレを見る。
スミレが頷く。
スミレ「綾乃っていつもそうだよね」
と冷たい綾乃に視線を向ける。
スミレ「うん。融通が利かないっていうか、いつも、自分が一番正しいって」
綾乃「だって、間違っていないでしょう」
スミレが首を振る。
京香「何も、わかってない」
と二人で離れていく。
綾乃「ちょっと、待って………」
と手を伸ばすが、下を向いたまま動けない。
〇(回想終わり)水族館・女子トイレ・前
綾乃と杏奈が歩いてくる。
綾乃「あれ以来、ずっと口もきかないまま卒業しちゃって………」
杏奈「確かに真面目過ぎるかも……」
綾乃が一瞬、杏奈を見てがっくりと肩を落とす。
杏奈「あ、ごめんごめん。そんなつもりじゃなくて………」
綾乃「いいの。それを直すチャンスだと思って誘ってもらったのに、雪平くん、見てたらどうしても我慢できなくなって、嫌な思いしたでしょう」
杏奈「そんな。ルールは大事なことだから、悪いことじゃないと思うよ」
綾乃が尊敬の眼差しを杏奈に向ける。
綾乃「杏奈さんっていい人」
杏奈「そんなことないよ」
杏奈M「綾乃さんって美人で、頭もよくて、何でもできそうなのに、悩みがあるんだ。なんか、ちょっとだけ親近感あるかも」
〇同・通路
伏見、高橋、山中、香取たちが話している。
杏奈、綾乃が来る。
杏奈「ごめーん。時間かかっちゃった」
伏見「ああ、大丈夫、これから昼にしようって話してたんだ」
杏奈「あれ? 雪平くんたちは?」
伏見「サメのエサやりが見たいって、レストラン前で合流予定」
杏奈「そうなんだ」
綾乃「ここのレストランの名物は青いカレーで海をイメージしてジャガイモもヒトデの形をしているの」
みんなが綾乃を見ている。
綾乃「………あ、ごめんなさい。また、悪い癖が………」
と下を向く。
高橋「いや。選ぶ参考になるよ」
山中「うん。さすが胡桃沢さん」
香取「カレー好きだから頼んでみるよ」
杏奈M「前途多難そう?」
〇同・レストラン・店内
雪平、星羅、羽澄、麻衣が同じテーブルでカレー、サンドイッチ、パスタなどを食べている。
杏奈、伏見、綾乃、高橋、山中、香取が二つのテーブルをくっつけて、青いカレーを食べている。
中山がカレーを食べた後舌を出して青くなっているのを見て笑っている。
〇同・2F・イルカのショーの会場
円形のプールに客席が満席。
伏見、杏奈、綾乃、高橋、山中、香取、雪平、星羅、羽澄、麻衣が座っている。
イルカが音楽に合わせて泳いで飛び上がる。
水しぶきが飛んでくる。
みんな、キャーキャー言いながら楽しんでいる。
最後にイルカが客席近くで大ジャンプをして水しぶきが杏奈と綾乃にかかる。
曲が終わり、ショーの終了を告げるアナウンスがある。
綾乃「やだー。濡れちゃった」
綾乃の右肩から服の半分近くが濡れている。
杏奈「私も、どうしよう」
杏奈は左肩から同じように濡れている。
綾乃「着替えなんか持って来てないし……」
香取「売店で何か売ってなかったか?」
綾乃「そうだった。Tシャツとかトレーナーとか売ってるんだった」
と手をたたく。
綾乃「じゃあ、行きましょう」
杏奈の腕を掴んで立ち上がる。
杏奈「?」
綾乃「一緒に買いましょう」
と杏奈の腕を取って出口へ向かう。
杏奈「え、ちょっと待って」
〇同・売店・店内
親子連れやカップルが商品を見ている。
綾乃と杏奈がTシャツを見ている。
綾乃「これがいい。これにしない」
とかわいらしいピンクのイルカが描かれたTシャツを見せる。
杏奈「かわいい……けど、かわいすぎるかな」
杏奈M「あんなの来たら、絶対、小学生ってからかわれる」
綾乃「じゃあ、買ってくるわね」
杏奈「待って、お金」
綾乃「付き合わせたお礼をさせて」
杏奈「自分で買うから……」
レジの列に並ぶ綾乃。
杏奈M「デザインは自分で選ばせて!」
〇同・更衣室・前
杏奈がTシャツを着て出て来る。
杏奈「勢いに負けて着てしまった」
横にある鏡を見る。
年齢以上に幼く見える。
杏奈「濡れててもいいから着替えよう」
更衣室に戻りかける。
伏見の声「だいじょう……告白………するって………」
杏奈が振り返る。

