幼なじみは離れない      【マンガシナリオ】

〇同・外観(夕)
   校舎から夕陽が見える。

〇同・渡り廊下(夕)
   杏奈が走っている。

〇同・職員室(夕)
   先生が足を組んで、杏奈のスマホを持っている。
   杏奈が頭を下げる。
杏奈「ごめんなさい」

杏奈M「本当は違うのにどうして謝らなきゃいけないのよ! 雪平くんは絶対に許さない」

先生「ゲームに夢中になるのはわかるが、切り替えをしっかりできるようになれ」
   とスマホを杏奈に渡す。
杏奈「ハイ」
   と受け取ると「失礼します」とさっと出て行く。

〇同・体育館・入り口・外(夕)
   通学バッグを持って杏奈がスマホを食い入るように見る。

   画面に「いいよ(かなりスクロールして)ムカつくけど」

杏奈M「これはいいこと? どう受け取ったらいいの?」

   穴が開くほどスマホを見つめる。

   体育館の扉が開く。
   穂波が顔を出す。
穂波「杏奈ちゃん。ここにいたんだ。ほら、早く始まってるわよ」
杏奈「すみません。すぐに着替えます」
   と部室棟へ走る。

〇同・部室棟・前(夕)
杏奈「とにかく、今日は、竜ちゃんと一緒に帰るわよ」
   とオー! 腕を上げる。

〇通り(夜)
   杏奈がカバンを抱えて走っている。

杏奈M「あー遅れる! なんで今日に限って部活が遅れるの!」

〇(回想)〇×高等学校・体育館・外観(夜)
   校舎の上に月。
部長の声「大変だ!」

〇同・体育館。内(夜)
   時計が7時前。
   バスケ部員がボールを片付けている。

穂波「何?」
部長「みんな動くな!」
   部員が止まる。
   そのうちの数人はわかった顔をしている。

部長「コンタクトが落ちた」
穂波「またぁ!?」
部長「スマン。一緒に動かず、探してくれ」

   ボールを持って片足で立つ雪平。
雪平「動かなきゃ無理っしょ」
部長「そうだった。なるべく慎重に頼む」
全員「はい」

〇(回想終わり)通り・線路付近(夜)
   杏奈の荒い息づかい。
   線路に電車が止まっている。

杏奈M「アレに乗らなきゃ」

〇駅・ホーム(夜)
   杏奈がホームに着いて手を伸ばす。
   電車のドアが閉まり出発する。

杏奈「間に合わなかった」
   がっくりと肩を落とし下を向く。

杏奈M「なんで、いつもいつもこうなの? 竜ちゃんと仲が深まったかと思ったのに……何でこんな試練が………」

   周りの乗客が遠巻きに杏奈を見ている。
   杏奈がバッと顔を上げる。

杏奈M「やってやろうじゃない。きっとこれは二人の愛を確かめる試練よ」

   と立ち上がる。
   目が燃える杏奈。

杏奈M「ゴールデンウイークの予定を竜ちゃんと一緒のデートに変えてやる!!」

〇電車・車内(夜)
   杏奈が座っている。
   隣の席が空いている。

杏奈M「出かけるって言っても、どこに行くのかな? 定番の映画? 遊園地、水族館、初デートにするんだもん。さいっこーにいい場所に……」

   うつらうつらする杏奈。

杏奈M「最近、いろいろなことがあったから疲れちゃったかな………」

   杏奈が完全に寝る。

   ×  ×  ×

   電車が止まりドアが開く。
   降りる駅の一駅前の駅名が見える。
   伏見が乗り込む。

   伏見が寝ている杏奈を見つける。

伏見「(小声)わざわざ降りたのに」
   杏奈の横に座る伏見。
   ドアが閉まり電車が動きだす。

   ×  ×  ×

   降りる駅名をアナウンスされる。
伏見「杏奈。降りるぞ」
   杏奈が目を覚まして伏見を見る。

杏奈「(驚く)竜ちゃん! どうして?」
伏見「……降りる駅間違えたんだよ」
   と横を向く。

   杏奈が伏見の耳が赤いのに気づく。

杏奈M「耳が赤い。竜ちゃんて、ウソつくといつもこうなるんだよね」

   とクスッと笑う。

伏見「間違えたんだからな」
杏奈「うん」

   電車が止まり二人が降りる。

杏奈の声「間違えたんだね」
伏見の声「そうだよ」