幼なじみは離れない      【マンガシナリオ】

〇花園家・玄関・外(朝)
   杏奈が「行ってきます」と元気に出て来る。

〇通り・伏見家・前(朝)
   伏見が手を挙げる。
伏見「はやく。遅刻するぞ」

   杏奈、来る。
杏奈「わかってる」
伏見「(腕時計を見る)走るぞ」
杏奈「えー!」
   と一緒に走り出す。

〇電車・外観
   線路を走る。

〇同・車内
   止まって伏見が降りて行くのを手を振って見送る杏奈。

〇〇×高等学校・外観

〇同・教室
   杏奈がニコニコと授業を受けている。

杏奈M「また、一緒に登校できるし、帰りも一緒になれそう」

   隣の雪平が眠って教師に怒られている。

杏奈M「あれ? 何か、大事なことを忘れているような………」

   チャイムが鳴る。

   杏奈のスマホが鳴る。
杏奈「竜ちゃんからだ。なんだろう」
   スマホの画面「今度のGW、一緒に出かけないか?」

杏奈「きゃー!!」
   クラスメイトが注目する。

   杏奈が「ゴメン」と小さくなる。

杏奈M「竜ちゃんと一緒、もしかしてデ…デ……デート!?」

   顔がにやける杏奈。
杏奈「もちろん。OK」
   とスマホで送信する。


   チャイムが鳴る。
杏奈M「やっと恋人らしいことできるかも? もう何があっても、二人は大丈夫。二人は強い絆で結ばれるってやつ?」

   杏奈の周りに大小さまざまなハートが飛ぶ。

杏奈M「もう不安になることも、悩むことも、誰かに取られるかもって心配も無くなる」

〇同・中庭
   バレーボールで遊んでいる生徒たちにグループで話している生徒たちがいる。
   杏奈がベンチに座ってスマホを見ている。

杏奈「どこに行くのかな?」
   スマホの画面「こっちは5人で行くから、そっちも何人か誘ってくれ」

   と教室で撮影された伏見と綾乃ほか3人の生徒が映っている写真。

杏奈「忘れてたぁーーー!!!」

   と頭を抱える。
杏奈「忘れてた。ゆるふわ女子、綾乃さん!」

   ×  ×  ×
(フラッシュ)
   伏見と綾乃が手をつないで杏奈から離れていく。
  ×  ×  ×

  杏奈が首を左右に何度も振る。

杏奈M「だ…だい……大丈夫よ。昔からよく知っているんだもの。ずっと一緒にそばにいたもの………」

   とスマホを胸に深呼吸する。

   ×  ×  ×
雪平「あの二人、お似合いじゃね」
   ×  ×  ×

   杏奈が両手で顔を隠す。

杏奈M「わかってるわよ。イケメンと美女って感じで、二人で一緒にいると絵になるって………」

  チャイムが鳴る。

   雪平が来る。
雪平「腹でも痛いのか?」

杏奈M「あんたの言葉で不安になっているんでしょう」

   とギッと睨む。

   気づかない雪平。
雪平「早く行かないと午後の授業遅刻するぞ」
   と杏奈の腕を引く。

  スマホが膝の上から落ちる。
   雪平がスマホを拾う。

   画面に伏見からのメッセージ。

雪平「へぇ。グループ交際?」
杏奈「ち……違うわよ」
雪平「オレも行く」
  とスマホを操作する。

杏奈「ちょっと、何するの!?」
   手を伸ばして取り返そうとする。
雪平「えーと。同じクラスメイトのイケメン夏生くんも一緒よ。よろしくね」
   と送信する。

杏奈「あー勝手に!」
   雪平が杏奈の首に腕を回してピースサインをして写真を撮る。
   杏奈は雪平に向かって何か話している写真を送信する。
杏奈「ちょっと、何を勝手に………」
雪平「じゃあ、教室に急ごう」

   とスマホを持ったまま杏奈の腕を取って走り出す。

〇同・校舎・廊下
   人がいない。
   雪平が腕をつかんだまま杏奈と走る。

杏奈「ちょっと、スマホ返してよ」
雪平「オレも、一緒に行っていいって言ってくれたらな」
杏奈「………竜ちゃんに聞いてOKだったらね」

杏奈M「どうせ、竜ちゃんがOKするはずないし」

雪平「OK」
   とスマホを見てから杏奈に帰す。

〇同・教室・前
   雪平の後ろに杏奈。
   スマホを見ようとする。
   雪平がドアを開ける前にドアが開く。
   先生が立っている。

先生「遅刻だ!」
雪平「すんません。遅れました」
先生「君もだ」
杏奈「(スマホを持ったまま)ごめんなさい」
   と頭を下げる。

先生「どうせ、スマホゲームに夢中で遅れたんだろう」
   杏奈が雪平をじろっと睨む。
雪平「別のものが面白かったんだけどな(杏奈を見る)」
   とヘラヘラと笑う。

先生「罰として没収だ」
   と杏奈のスマホを取り上げる。

杏奈「そんな……」
先生「放課後、職員室まで取りにくるように」
杏奈「まだ、返信見てないのに……」
先生「さっさと席について」
雪平・杏奈「はーい」

〇同・教室・内
   杏奈ががっくりと肩を落として席に着く。

杏奈M「あんなメッセと写真で誤解されるじゃない。すぐにでも、訂正したいのに………」

   隣の席で教科書を見ている雪平を睨む。
   雪平が気づいてピースサインをする。
   杏奈が「ふん」とそっぽを向く。

杏奈M「どうか、竜ちゃんが観てませんように………」