幼なじみは離れない      【マンガシナリオ】


〇□□高校・外観
   T・「試合当日」
   部員が校門をくぐって行く。

   ジャージ姿の杏奈がリュックを背負って歩いて行く。
杏奈「竜ちゃんと会えないまま、この日が来ちゃったよ」
   とスマホを見る。

   スマホの画面に「今日は練習試合だね。応援してるからね」
   返事「わかった」

杏奈M「『わかった』ってどういう意味? 〇×高校の応援すること? 表だって竜ちゃんを応援できないこと? それとも………雪平くんを応援すると思ってる?!」

   雪平、来る。
雪平「おーい。ぼうっとしてっと置いてくぞ」
   と杏奈の背中を叩く。
   杏奈がハッとして後をついて行く。
   杏奈が雪平の背中を睨む。

杏奈M「竜ちゃんとの間をややこしくした張本人のくせに」

〇同・体育館・前
   体育館へ部員が入って行く。

〇同・内
   練習を始める両校の部員たち。
   穂波と杏奈はタオルや水筒の準備と忙しくしている。

穂波「今年も、人気みたいね」
   と体育館のメンテナンスギャラリーにクラスメイトA・B・C他、数十人がいる。

杏奈「すごっ」

   杏奈は伏見を探す。
   伏見が練習でパスを受けてシュートを決める。
   杏奈が笑顔になる。

杏奈「(小声)竜ちゃん。かっこ……」

   遮るように「きゃー」と歓声が上がる。
   杏奈が上を見る。
   メンテナンスギャラリーに□□高校の制服を着た女子たちの他にクラスメイトたちも一緒に盛り上がる。

穂波「あの子が向こうの新人エースくんかな?」
   と伏見を見る。
杏奈「竜ちゃんが……」
穂波「知り合いなの?」
杏奈「あ……」
杏奈M「恋人ですって堂々と言いたいけど……(チラッとギャラリーを見る)あの女の子たちとに見られそう。そんなのヤダ」
穂波「どうしたの?」

   雪平がシュートを決める。
   また歓声があがる。

穂波「見てるだけの人は、相変わらず節操ないな」
   と苦笑い。

杏奈も「はは……」と笑う。
   部長、来る。
部長「ホナミン。スコアつけ、ちゃんと教えてやってくれよ」
穂波「わかってるって」
杏奈「お願いします」
   と頭を下げる。

   杏奈がノートをしっかりと持って、
杏奈「部活は部活。しっかりと仕事をしなくちゃ」
   頬を叩いて気合を入れる杏奈。
   反対側から見ている伏見。

   ×  ×  ×

   試合中、〇×高校の部員がパスを回す。
   部長がシュートを決める。
   ギャラリーが湧く。
   ベンチに穂波と並んで座って杏奈がスコアを記入している。
穂波「ナイス!」
   杏奈が拍手をする。
   ボールが相手選手からパスを受けて伏見が相手ゴールにドリブルして行く。
杏奈M「竜ちゃん。ガンバレ」
   と両手に力が入る。

   パスを回して伏見がシュートを決めようとする。
杏奈「ガンバレ!」
   雪平がディフェンスで伏見とぶつかる。
   伏見が倒れる。
杏奈「!!!」
   杏奈が心配そうに見ている。笛が鳴る。

   審判役の選手がファールを告げる。
   雪平が手をあげる。
雪平「悪いな。こんな軽くふっとぶなんて思わなくて」
伏見「ファールでしか止められない。単細胞」
   と立ち上がる。
雪平「何!」
伏見「フリースローのプレゼント。ありがとう」
雪平「くっそ!」
部員A「ドンマイ。切り替えてこう」
   と手をたたく。
雪平「クソ!」

   伏見がフリースローの位置につく。
   伏見がフリースローを決めて杏奈がガッツポーズをする。

穂波「杏奈ちゃん? 相手が決めたのよ」
杏奈「ああ、すみません。つい、すごいなって思って」
   と「へへへ」とごまかす。

伏見が見ている。

   シーソーゲームで進んで行く。

穂波「あと、5分。頑張って」
穂波「ガンバレ!!」
   と雪平たちを見て、走っている伏見を見ながら、声を出さないで口を動かす、「が・ん・ば・れ」
   杏奈は気づかないが伏見は気づく。

   同点になる。

   残り時間3分。
   雪平がシュートを決めて、逆転する。
穂波「ナイス! ユッキー」
杏奈「ナイス」
   と言ったあとハッとする。

杏奈M「やっぱり自分の高校応援しちゃうよ………(伏見を見る)一番、応援したいのは竜ちゃんなんだけどな」
   ゲームが再開する。

   ×  ×  ×
(フラッシュ)
〇中学校・体育館・館内
   バスケのゲームをしている伏見。
   シュートを決める。
   両手をあげて喜ぶ杏奈。
杏奈M「中学のときは思いっきり応援してたのに」

×  ×  ×

   □□高校が決めて同点になる。
穂波「次の一本で決まるわね」
杏奈「はい」
   スコアボードとペンを強く握る。

   コート中央で伏見とボールを持った雪平がにらみ合う。
雪平「取らせないぜ」
伏見「打たせない」
   杏奈と穂波が息を呑んで見守る。
   仲間が「こっち」と手を振る。
   視線を向けて伏見を抜こうとする。
   伏見が読み切って、ボールを奪う。
   杏奈が立ち上がりそうになって座る。
   ゴールに向かう伏見を追う雪平。
   前に部長がディフェンスをするがルーレットで抜かす。
   雪平がまた、同じようにファールをしようとするがそれもよけてゴールを決める。

   笛が鳴る。

審判「試合終了」
杏奈「やったー!!!」
   と飛び上がる。
穂波「杏奈ちゃん……?」
   穂波や他の部員が杏奈を見る。
杏奈「ごめんなさい」
   と頭をさげる。
   伏見が杏奈に気づかれないままクスッと笑う。

〇同・校門(夕)
   ジャージ姿で〇×高校の部員が帰るところ、□□高校の部員が「またな」「いい試合だった」など言って見送る。

杏奈M「このまま、竜ちゃんと一緒に帰りたいな。一回だけ、竜ちゃんと同じ学校からの帰り道、してみたかったな」

   と肩を落としながら歩く。

   杏奈が部員たちに続いて校門をくぐろうとする。
   バッグを斜め掛けした伏見、来る。
   伏見が杏奈の腕をつかむ。
杏奈「竜ちゃん………」
伏見「先輩たちに許可もらってるから……」
   杏奈の顔に夕陽がかかる。
伏見「一緒に帰ろうぜ」
杏奈「(目を見開いて)………」
伏見「(照れて)だから、一回くらい一緒に、同じ高校から帰りたいから」
   伏見の顔も夕陽に照らされて髪が風になびく。
   杏奈が何度もうなずく。
杏奈「うん。私も、そう思ってた」
   伏見と杏奈が一緒に笑う。

〇電車・外観(夕)
   線路を走る。

〇同・車内(夕)
   杏奈と伏見が隣同士に座っている。

伏見「なあ。隣のそれたちは何だ?」
杏奈「………知らない」

   雪平と部員が杏奈の隣に並んで座っている。
   部員たちが「どうも」と一礼する。

雪平「帰り道、一緒だから、部長が気をきかせて送ってけって行ったから」
   と笑う。

杏奈「ゴメン。『帰り道こっちだから』って言ったら、部長が気を利かせてくれて……」
   伏見が大きくため息をつく。
杏奈「ゴメン。竜ちゃん」