幼なじみは離れない      【マンガシナリオ】

〇電車・車内(早朝)
   眠そうな杏奈。
   隣の車両の伏見をチラッと見る。

杏奈M「一緒に行きたいってメッセで伝えたけど、『大丈夫だから』って、そうじゃない」

   杏奈がため息をつく。
   電車が止まる。

〇同・隣の車両(早朝)
   綾乃が乗って来る。
   綾乃が気づいて伏見に手を振る。
   伏見が笑顔で手を振る。

〇車両・車内(早朝)
   杏奈が隠れて、じっと二人を見てる。

〇線路
   電車が走って行く。
杏奈の声「何でこうなったの!」

〇〇×高等学校・外観

〇同・教室
   杏奈が机に伏している。
   雪平は男子のクラスメイトと話している。

   クラスメイトA・B・Cが来る。
クラスメイトA「ねぇ。花園さん。聞きたいことがあるんだけど」
   杏奈が顔を上げる。

杏奈「何?」
クラスメイトB「今度、バスケ部の練習試合あるんだって?」
杏奈「うん」
クラスメイトC「私たち応援に行きたいんだけど、いいでしょう?」
杏奈「応援?!」
クラスメイトA「毎年、人気があるイベントじゃない」
杏奈「そうなの?」
クラスメイトB「知らないでマネージャーやってたの?」

   杏奈が首を横に振る。
クラスメイトAがちらっと雪平を見る。
クラスメイトA「うちの学校結構、レベル高いらしいし」
クラスメイトC「(小声)雪平君て、人気あるんだよ」
   杏奈が目を広げて驚く。

   チャイムが鳴る。
クラスメイトA「じゃあ、詳しいこと後で、教えて」
   と三人が席に戻る。
杏奈「うん。わかった」
   と手を振る。
   チラッと雪平を見る。
杏奈M「アイツ、そんなに人気あったの? 見た目、不良っぽくて怖そうだけど……」

   と腕を組んで考え込む。

杏奈M「人の好みはわからない」

〇駅・ホーム(夜)
   杏奈がスマホを両手で握って画面を見ている。

杏奈M「今日は私も、遅くなっちゃった。もし、同じ時間なら一緒に帰ろう?」

   杏奈がうーんと首を傾げる。
杏奈「これでいいのかな?」

   ×  ×  ×
(フラッシュ)
〇電車・車内(早朝)
   綾乃が伏見と会う。
   ×  ×  ×

   杏奈が下を向く。

〇(想像)とある場所
   伏見と綾乃がニコニコと仲よさそうに並んで立っている。

   杏奈が二人に気づいて近づく。

杏奈「竜ちゃん」
伏見「杏奈。オレ、本当はお前のこと好きでも何でもなかったんだ」
   杏奈が呆然と伏見を見る。

伏見「オレが好きになったのは綾乃だから」
   と二人で見つめ合う。

伏見「じゃあな」
   と二人が歩いて去って行く。
   杏奈が「待って!」と手を伸ばす。

〇(想像終わり)駅・ホーム(夜)
   杏奈が首を何度も横に振る。

杏奈M「ないないない。絶対にない」

   電車が付いてドアが開く。
   杏奈が乗り込む。

〇電車・車内(夜)
   スマホを持ったままの杏奈。
杏奈「竜ちゃんのことを信じなきゃ」
   雪平、来る。
雪平「よく、スマホ見てるな。気持ち悪くならないか?」

   と顔を近づける。

杏奈「きゃあ」
   と驚く。

杏奈「何?」
雪平「どうせ同じ電車なんだから一緒に帰ろうぜ」
杏奈「断る」
雪平「えー。いいじゃん。帰り暇なんだし」
杏奈「他にも一緒に帰る人いるでしょう」

   同じ部活の男子がかたまっている。
雪平「男同士より女子とのほうがいいじゃん」
杏奈「よくない」

杏奈M「竜ちゃんと会えなくなった原因なのに一緒にいたくないけど、どう伝えれば……」

   ×  ×  ×
   電車が止まる。
雪平「じゃあ。また、明日な」
   と手を振って降りていく。
   杏奈が反射的に手を振ったがハッとして引っ込める。

杏奈M「私のバカ! 結局、ずっと隣でしゃべらせてるし、竜ちゃんには会えないし……」

   ため息をつく。
杏奈「最悪」
   電車が動き始める。

杏奈M「竜ちゃんとこんな状態のまま、試合当日なんて迎えたくないよ。どうしたらいいの?」
   と上を向く。

   隣の車両から綾乃が見ている。