明日もきっと、晴れるはず

数年が経ち、西暦1868年。某月某日。
その日は、千駄ヶ谷にある古びた植木屋の屋敷にいた。夜が深まる頃、沖田はその屋敷の庭先に座り込んでいた。月明かりが庭の木々を照らし、風がそっと枝を揺らしていた。彼女は、しばらく前から咳き込みがひどくなり、血の混じった痰を吐くことが多くなっていたが、それでも自分の役目を果たすために休むことなく働き続けていた。

この場所は、沖田がかつて通りかかった際に目にした、あまりにも静かな庭の風景に心惹かれて立ち寄った場所だった。庭の静けさと、時折聞こえる風の音が彼女を癒してくれる場所だった。

その夜も、いつものように庭で静かに座っていた沖田は、今夜が最後だと気づいていた。呼吸が苦しく、胸が重い。彼女は何度も深呼吸を試みたが、次第に息が続かなくなってきた。

「――もう、終わりなんだな。」

小さな声で呟いたその言葉に、彼女の体は弱く震えた。突然、遠くから近藤勇の顔が浮かんできた。

「沖田、お前はどこにいる?」

彼の声が耳の中で響くような気がした。だが、答えることはできなかった。彼女はもう、力尽きそうだった。

そのとき、背後から誰かの足音が近づいてきた。沖田は微かに顔を上げると、土方歳三が静かに立っていた。

「沖田……」

土方の声はいつもより優しさを帯びていた。沖田はその目を見て、微かに笑みを浮かべた。

「土方さん……。」

土方はゆっくりと沖田の隣に座り、言葉を続けた。

「お前……無理するなと言っただろう。」

沖田はその言葉に、もう一度小さく笑った。

「うん……でも、もう少しだけ、頑張ってみたかったんだ。」

沖田は視線を庭の木々に向けた。風が吹き、木の葉が揺れ、月明かりが静かに彼女の顔を照らしていた。

土方はしばらく黙っていたが、やがてその静かな空気を破った。

「沖田、あいつら――お前がいなくても、俺たちはしっかりやる。だから、心配するな。」

沖田はその言葉を聞いて、うっすらと涙を浮かべた。

「……土方さん、ありがとう。」

その瞬間、沖田の手がかすかに震え、ゆっくりと胸に手を当てた。苦しそうに咳き込む沖田。土方が支えようと手を伸ばすが、沖田は静かに首を振った。

「もう……すぐ……楽になるよ。」

沖田はそのまま目を閉じ、深い息をついた。その息が、ゆっくりと最後に消えるように、彼女の体は動かなくなった。土方はその瞬間を見守り、沖田の死を感じ取った。

「沖田……」

土方は涙をこらえながら、沖田の体を抱きしめた。

「お前の分まで、俺たちが頑張るからな。」

沖田の命は、静かにその夜、千駄ヶ谷の静かな庭で終わりを迎えた。植木屋の庭は変わらず静かで、ただ風の音が続いていた。彼女がその場に横たわる姿は、まるで眠っているようであった。

翌日、近藤や斎藤一、その他の隊士たちが沖田の死を知り、千駄ヶ谷の植木屋へと駆けつけた。そこで彼らが目にしたのは、沖田が安らかな顔で眠っているような姿だった。彼女の姿を見た瞬間、近藤の目には涙が浮かび、土方も言葉を失った。

「沖田……お前が残したものは、俺たちがしっかり受け継ぐ。」

近藤が涙を拭い、静かに呟いた。その言葉に、沖田が生前残した力強い意志が込められているように感じた。






西暦1868年5月30日。千駄ヶ谷のとある植木屋にて沖田総司死去。享年25。



天気は綺麗な快晴。その空の色は浅葱色だった。





明日もきっと、晴れるはず────






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