明日もきっと、晴れるはず

男が扇を軽く振ると、影がまるで生き物のように動き、空中にいた沖田の足を捕えた。

「しまっ……!」

重力に引かれるように、沖田の体が地面へと叩きつけられる。

「ぐっ……!」

鋭い痛みが背中を走る。しかし、すぐに転がって体勢を立て直した。

だが――影は逃がさない。

瞬く間に四方を囲まれ、完全に退路を断たれる。

「さて……君の答えは、どうなるかな?」

男の冷たい声が響く。

沖田は歯を食いしばり、剣を握り直した。

(僕は、人間として……!)

だが、影が一斉に襲いかかる瞬間――

沖田の中で、何かが弾けた。

「――っ!!」

全身を駆け巡る熱。

まるで血が沸騰するような感覚。

気づけば、沖田の視界が金色に染まっていた。

「これは……!」

男の目が驚きに見開かれる。

沖田の背後に、銀色の炎が燃え上がっていた。

それはまさしく――“妖狐”の力だった。

(やめろ……!)

沖田は必死に自分を抑えようとする。

(僕は、人間として戦うんだ……!)

だが、体はそれを拒むように動く。

剣を振るうと、銀の炎が刃を包み込み、影を焼き尽くしていく。

「はは……なるほど。これが君の本当の力、か。」

男は笑みを浮かべながら、沖田を見つめた。

「君はやはり、人間ではいられないよ。」

「……黙れ!」

沖田は叫び、男へと剣を振るった。

しかし――

「今日はここまでにしよう。」

男は一歩退くと、影に溶けるように姿を消した。

沖田の剣は、虚空を斬る。

「……っ!」

沈黙が戻る。

沖田は、ただ静かに剣を下ろした。

(……僕は、どうすればいい?)

妖の力を否定しながら、それに頼ってしまう自分。

その矛盾が、胸を締め付ける。

遠くで、夜明けを告げる鐘の音が鳴った。

沖田は、闇の中で立ち尽くしたままだった。

人間に戻る方法
沖田は、自分の手をじっと見つめていた。

震える指先。妖としての力が暴走し、制御できなくなる恐怖。

(僕は……本当に人間に戻れるのかな。)

思えば、いつからか “妖” としての力に抗うことを諦めかけていた。

戦えば戦うほど、剣を振るうたびに “妖” の力が強くなる。

人間でいたいのに―― 自分の本質がそれを許さない。

(でも、僕は……新選組にいたいんだ。)

新選組で、人間として剣を振るいたい。

妖ではなく 「人として」 剣士でいたい。

そのために何をすべきか――考えた。

妖の力を封じる方法
(……何か方法があるはずだ。)

新選組は、ただの剣士集団ではない。 妖を討つ「払い屋」でもある。

つまり、妖を封じる技術や知識があってもおかしくはない。

(だったら、僕の “妖” も封じられるんじゃないか……?)

沖田は、意を決して立ち上がった。

向かう先は、一人の男のもと。

――斎藤一。

新選組三番隊組長。寡黙で冷徹な剣士。

だが、彼は 「妖と人間の狭間にいる者」 について、何かを知っているはずだった。

(斎藤さんなら……きっと何か知ってる。)

夜明けの空を背に、沖田は屯所の奥へと足を進めた。

人間に戻るために――。