明日もきっと、晴れるはず

戦場に響く剣戟の音。

沖田はすでに何人もの敵を斬り伏せていた。血の匂いが鼻をつくが、そんなことは今更どうでもいい。ただ斬る、ただ斬る――それだけを考えていた。

だが、異能を持つ者たちは、ただの反政府勢力とは違った。彼らの動きは常人を超えており、まるで異形のものだった。

「やっぱり、普通の人間じゃない……!」

沖田の背筋に冷たい感覚が走る。目の前に立つ敵――黒い外套を纏った男の腕が、異様な角度で曲がる。次の瞬間、その腕が異常な速さで伸び、沖田に襲いかかった。

「っ!」

咄嗟に剣を振るい、その腕を斬り落とす。しかし、男は苦しむ様子もなく、ニヤリと笑う。

「なるほど……お前の血は、やはり特別だな。」

その言葉が沖田の頭に引っかかった。

(私の……血?)

疑問が生まれる間もなく、男の体が再生し始める。切断された腕が再び生え、まるで何事もなかったかのように立ち上がった。

「……やはり、お前も『こちら側』の存在か。」

その言葉を聞いた瞬間、沖田の胸の奥がざわめいた。まるで心臓を鷲掴みにされたような感覚――そして、次の瞬間、彼女の身体の奥底から熱い何かが湧き上がってくる。

(……これは、何?)

剣を握る手が震える。視界が歪む。呼吸が荒くなる。

「おい、沖田! どうした!」

遠くから土方の声が聞こえた。しかし、それはまるで遠い世界の音のように感じられた。

沖田の中で、何かが軋むように軋み、そして…… 弾けた。

「――――ぁぁあああああっ!!」

彼女の中から爆発するように力が解き放たれる。髪が逆立ち、瞳が紅く光る。全身から妖気が溢れ、地面が震えた。

「……やはり、そういうことか。」

黒い外套の男が満足そうに微笑んだ。

沖田の意識は、すでに闇に染まりつつあった。身体が熱い、頭が割れそうだ―― だが、それでも剣を振るうことだけは止められなかった。

次の瞬間、沖田の剣が閃いた。

それは、今までとはまるで違う速さだった。

黒い外套の男が反応する間もなく、彼の身体がいくつもの細切れになり、霧散する。

「なっ……!」

周囲の敵が恐怖に凍りついた。

「殺す……」

沖田の声は、まるで獣のようだった。

「全部……殺す……」

紅く光る瞳が、次の獲物を探す。

彼女の意識の中には、もう 敵も味方もなかった。 ただ剣を振るい、目の前にある命を狩るだけの存在と化していた。

「沖田、やめろ!」

土方が叫びながら駆け寄る。しかし、沖田はその声に反応することなく、刃を振り上げた。

「沖田!」

その時―― 目の前に、斎藤が立ちはだかった。

沖田は本能のままに斬りかかる。しかし、その刃は…… 寸前で止まった。

「……っ!」

彼女の手が震える。紅い瞳が、ほんの一瞬だけ揺らいだ。

「沖田、お前……戻れ。」

斎藤の低い声が響く。

その言葉を聞いた瞬間、沖田の身体から力が抜け、膝をついた。荒い息を吐きながら、ゆっくりと意識が戻っていく。

(私……今、何を……)

剣を見下ろすと、その刃にはべったりと血がついていた。

恐る恐る周囲を見渡すと、そこには―― 自分が斬り伏せた者たちの骸が転がっていた。

味方のものも、敵のものも……見分けがつかないほどに。

「……やっちゃった、の……?」

震える声で呟くと、土方が厳しい目で彼女を睨んだ。

「……沖田。てめえ、何をしたか分かってんのか?」

その言葉に、沖田の心が凍りつく。

私は、また……『妖』として、暴走してしまったのか。

その事実に気づいた時、彼女の胸に深い絶望が広がった。