沖田は池田屋の奥へと駆け出した。土方の声が聞こえた方向を目指して、すぐに足を進める。戦闘の余韻が残る中、周囲の隊士たちが彼女を追いかける気配を感じるが、沖田はそれに気を取られず、ただ前に進み続けた。
池田屋の奥、もはや混乱の真っ只中だ。沖田がたどり着くと、そこにはすでに近藤、土方、斎藤らの姿が見えた。しかし、何よりも目を引いたのは、池田屋の内部がすでに火の手を上げていることだった。煙が立ち上り、燃え盛る炎が建物の壁を赤く照らしている。
「総司!」土方が沖田に向かって叫ぶ。
沖田はその声を耳にして、ようやく立ち止まった。目の前に立つ土方の表情はいつもの冷徹なものとは少し違っており、彼の眼差しには強い焦燥と怒りがこもっていた。
「何があったんです、土方さん?」沖田は素早くその場の状況を把握しようとする。
土方は沖田を一瞥した後、すぐに答えた。「あの男たち、裏で動いていたのは幕府の謀略だ。だけど、それだけじゃない。お前を狙っている勢力が別にいる。」
「狙っている勢力?」沖田はその言葉に思わず眉をひそめる。
「お前の正体を知っている連中だ。お前を生け捕りにし、何かを企んでいる。」土方は低い声で続けた。「その証拠が今、ここにある。」
土方が手で指し示した先には、今しがた沖田が倒した黒装束の一団が横たわっていた。その中の一人が、まだ息をしていた。
沖田はその姿を見て、すぐに状況を理解した。まさか自分の妖狐の正体を知っている者たちが、このように裏で暗躍していたとは思ってもみなかった。だが、これがすべての答えの一部だと感じ取った。
「それが……私を狙う理由ですか。」沖田は静かに呟いた。
「お前の力を手に入れようとする者がいる。だが、俺たちはそれを許さない。」土方はきっぱりと言い放った。「お前が今、どんな道を選んでも、俺たちはお前を守る。」
その言葉を聞いた沖田は、深く息を吸い込み、まっすぐに土方を見つめた。「ありがとうございます。私も……私の仲間を守るために戦います。」
その時、突如として新たな足音が近づいてきた。沖田はすぐに周囲を警戒し、剣を手に取った。土方もまた、視線を鋭くしてその音を確認する。
「誰だ!」土方は声を張り上げるが、すぐにその相手が誰であるかが明らかになった。
その足音の主は、斎藤一だった。彼は一歩一歩、静かな足音で近づきながら、無言で沖田の前に立った。その目にはいつも以上に冷徹な光が宿っていた。
「斎藤か。」土方が少し警戒しながら問いかける。
斎藤はその視線を土方に向けることなく、沖田に向かって一歩踏み出した。「沖田、あの者たちは裏で動いている。これ以上、ここにいては無駄だ。」
沖田はその言葉に一瞬戸惑うが、すぐに理解した。「分かりました。行きましょう。」
「行くぞ。」土方は沖田に向かって頷き、その場を離れる準備を整えた。
その瞬間、再び池田屋の奥から叫び声が響いた。さらに多くの敵が迫ってきたことを意味していた。沖田はその気配を感じ取り、すぐに足を動かした。
「さぁ、行きましょう。」沖田は深く息を吸い込んで言った。
土方と斎藤もその言葉に応え、同じように剣を構えて進む。
池田屋の建物が揺れ、火の手がますます激しくなる中、沖田は仲間と共にその先に待ち受ける敵に立ち向かう決意を固めた。


