明日もきっと、晴れるはず


沖田の言葉に、土方はしばらく無言で立ち尽くした。普段の冷徹さを保ちながらも、彼の目にはわずかな安心感が見え隠れしていた。沖田が決意を固めたこと、そして新選組としての使命を果たす覚悟を持っていることを、土方は知っていた。

「……そうか。」

土方は短く答え、再び沖田に向かって歩き出した。その姿に、原田や山崎も続く。だが、沖田はそのまま立ち尽くし、しばらく空を見上げていた。

「私は妖狐として生きる運命を背負っているのかもしれない。しかし、新選組の一員として、その命を全うすることが最も大切だ。」

沖田の胸には、これまでの迷いが確かにあった。しかし、その迷いを乗り越えた今、彼女の中にはただひとつの決意が固まっていた。それは、人間としての生き方も妖としての生き方も、全てを背負い、新選組の隊士として戦い抜くこと。

その思いを胸に、沖田は一歩、また一歩と歩き始めた。振り返らず、ただ前を向いて進んでいくしかなかった。

屯所の外では、夜の風が静かに吹き抜け、星空が広がっている。沖田の足音が響くたびに、その静けさが深まるように感じられた。

「総司、行くぞ。」

土方が振り返り、声をかけた。その言葉に、沖田はしっかりと頷き、彼の後に続いて歩き出した。

「はい、行きましょう。」

その言葉に、土方は僅かに顔を引き締めた。

「だが、もしあの者たちが本当に屯所に近づいてきているのなら、戦いは避けられない。油断するなよ、沖田。」

沖田はその言葉に深く頷き、心の中で自分に誓った。どんな戦いが待っていようとも、仲間たちを守り、そして自分の選んだ道を歩んでいくこと。その覚悟を持って、前に進むのだと。

その時、屯所の門の外に立っていた山崎が顔を上げ、何かを感じ取ったように言った。

「土方さん、原田さん。怪しい影が近づいている気配がします。今すぐ、準備を整えた方がいい。」

土方と原田は一瞬、表情を引き締めてお互いを見つめ合った。

「分かった。準備しろ。」

土方が言うと、原田もすぐに動き出す。その一方で、沖田は静かに剣を握りしめながら、仲間たちの背中を見つめていた。

彼女の中で、ついにその時が来たのだと確信した。自分の運命を受け入れ、仲間たちと共に立ち向かう時が。新選組としての誇りを胸に、沖田は再びその足を踏みしめた。

そして、屯所の外では、闇の中からゆっくりと不穏な気配が近づいてくるのが感じられた。

沖田は静かに息を吸い込み、周囲の気配を感じ取った。山崎の言う通り、何かが近づいている――それは、敵の足音か、あるいは別の何者かか。

「準備を整えろ、全員。」

土方の指示が落ち着いて響く。屯所の中では、一斉に隊士たちが動き始めた。剣を抜き、身構える姿が見え隠れする中、沖田もその流れに乗って剣を手に取った。

「沖田、お前も来い。」

土方が沖田を振り返ると、彼女はすぐに頷き、土方の後を追った。原田と山崎もすでに準備を整え、隊士たちは目の前に迫る敵に備えて戦闘態勢をとった。

沖田はふと、心の中で一つの思いを抱いた。それは、どんな敵が現れようとも、今自分が守るべきものは仲間たち、そして新選組の誇りだという確信だった。何があっても、前に進み続ける。それが今の自分の使命であり、責任だと感じた。

「来たか。」

山崎が低く呟き、その視線の先に闇の中から現れた影を見据えた。その影がどんどん近づいてくるのを、隊士たちは息を呑んで見守っていた。

「姿を見せろ。」

土方が鋭く叫ぶと、闇の中から一団の者たちが現れた。その姿は、妖の気配を感じさせるものであり、隊士たちの間に緊張が走った。

「妖か――。」

原田が冷ややかに呟く。新選組の隊士たちはすでにその戦闘態勢に入っている。だが、沖田は一歩前に踏み出し、静かな声で言った。

「土方さん、これは私の役目です。」

土方は振り返り、沖田の目を見つめた。その瞳に浮かぶ決意に、彼は少しだけため息をつき、頷いた。

「分かった。お前の好きにしろ。だが、無茶だけはするなよ。」

沖田は無言で頷き、剣をしっかりと握りしめた。彼女の心は冷静だ。妖としての力が湧き上がり、その力を使うことができる自信があった。ただし、それを使うことがどれだけ恐ろしい結果を招くかも十分に理解している。

「――行きます。」

沖田はそう告げると、一気に駆け出した。敵の一団に向かって、その鋭い目でターゲットを定める。

敵の妖たちはすでに戦闘の準備を整えている。その中で沖田は、刃を一閃。音もなく妖の首を刎ねると、瞬時に次の妖が襲いかかってきた。しかし、沖田はその動きに反応し、さらに素早くその刃を向ける。

戦いが始まった。沖田の動きは、まるで舞うように美しく、そして恐ろしいほどに鋭い。その剣は、まさに命を削るように妖たちの体を切り裂いていった。

「総司、待て!」

土方の声が響いたが、沖田はそれに答えることなく、ただ前へ進んでいった。彼女にとって、今は戦うことが全てだった。仲間たちの安全を確保し、新選組を守るためには、この戦いを終わらせることが最も重要だった。

斎藤も後ろから支援に回り、原田と山崎は周囲を警戒している。彼らの協力があればこそ、沖田は単独でも戦い続けられるのだ。

だが、戦いの中でふと、沖田は感じ取る。なぜか、この戦いの背後に、見えない何かが潜んでいるような気配がする――その気配に、胸の奥で小さな不安が芽生える。