明日もきっと、晴れるはず

「は?!この京都が妖の群れに飲み込まれるだと?!」

時は西暦1863年、幕末。とある組織のとある一室にて、そう声を荒らげたのは、

「歳。これは信じ難い話かもしれないが、幕府からの命令でな。総司をその妖の群れの元凶、大狐の生贄にしろとの事だ。」

紛れもない、新選組副長土方歳三であった。それに向かうのは同じく局長近藤勇。

今2人は残酷で何がなんでも断りたい命令について話し合っていた。

"総司を妖の群れの元凶大狐の生贄にする"


それは到底普通の人間ならば即死してしまうもの。それについて話し合っていた。

「どうするか……」

新選組は、幕府直下の治安維持組織。だが裏では幕府直下の"払い屋"

そして大狐を倒すためには生贄を一人選ばなくてはならない。それが沖田だった。すると、

「近藤先生。土方さん。」

「総司!聞いていたのか?!」

「……はい。」

新選組一番隊組長沖田総司。局長である近藤から暑い信頼を寄せられ、同時に新選組最年少にして一位二位を争うほどの剣の使い手。

「……難しい事は分からないんですけど、僕、生贄なります。」

その一言により、場の空気は凍りついた。

「何を言っているんだ!死ぬかもしれないんだぞ?!生きていたとしても無事では済まない!万一助かったとしても妖になるかもしれない!俺たちは、お前を失いたくない!」

近藤がそう一括入れる。何時もの沖田なら、近藤の命令は何があっても遂行する。近藤の一言で道を変えたりもする性格。近藤も今回は強気で言えば揺ぐはずがない。そう思っていた。

「……ごめんなさい。近藤先生の命令でも、聞けません。京都が危険にさらされてるんでしょう?それに、僕一人の命で何万という人の命が助かるなら、本望です。僕なら、大丈夫ですから。生贄、なります。」

「……だが……」

「お願いです。」

真剣な沖田に、近藤さえももうそれ以上言うことは出来なかった。

「それに、僕本当は女子なんですよ?新選組にいても、足手まといなだけです。だから、ね?」

そうして、沖田の生贄になる運命が決まってしまった。

そして次の日の夜、

新選組隊士達は大部屋に集まっていた。特に幹部達と総司を慕っていた隊士達は涙が止まらなかった。

「僕なら大丈夫ですから。お願いですから皆さん泣かないで。笑顔で、送ってほしいんです。」

そう言う沖田に、隊士達は涙を抑えるしかなかった。恐らくこの日が命日。数時間後には大狐の生贄となり亡くなってしまう。誰もがそう思っていた。

そして、最期であろう時を過ごしていると、幕府の者が屯所に見えた。

「時間です。」

そう告げられ、新選組隊士達は今度こそ涙が止まらなかった。

それに沖田は苦笑いして、

「泣かないでください。きっと、妖の群れを止めて見せます。僕一人の命で京の人々を守れるなら、本望ですから!


土方さん。今まで色々、すみませんでした。近藤先生も、出来の悪い弟で、すみませんでした。」

その言葉に、

「馬鹿野郎。てめぇが泣いてどうすんだ。」

「総司……謝りたいのは、俺の方だ。こんなところまで連れて来て、挙句の果てに、生贄になんか……」

二人は泣いていた。

そして、

大狐のいる場所まで幕府の者と歩いて行った。

「……(ↂ⃙⃙⃚_ↂ⃙⃙⃚)」

「……っ…!」

沖田が片手を大狐に向けると、その手目掛けて大狐が迫って来た。沖田は一歩も動く事無く、大狐に取り込まれた。


一方新選組は、

「……総司の野郎……総司がいねーで、どうすんだ……」

そう、泣いていた。

「なぁ土方さん。総司さ、確か引き継ぎしてたよな。」

「……誰に……」

「一番隊伍長の伊藤鉄五郎に。」

そして一斉に伊藤の方を向く。

「……俺には、組長の代わりなんか……」

そう泣いていた。

そして一方、沖田はと言うと、

「……っ!ぅ…熱い……よ………っ!」

大狐の"呪"に苦しんでいた。

内側から焼けるような痛みに堪えながらも、その痛みが終わるのをじっと待っていた。

大狐は炎を扱う妖。その妖が沖田程の小さな体格の人間の中に入り込んだ。即死決定だ。

すると、奇跡が起きた。


「……っ!」

「まさか、そんな事が……」

「あ、れ?僕……生きてる、の?」

大狐の呪に耐えたのだ。でも、その代償は

「……え?僕、妖狐になってる?」