「――くっ!」
沖田総司の身体が突然、宙に浮かんだ。
その瞬間、周囲の空気が重く、冷たく感じられる。
「総司!」
土方が叫び、刀を一閃させるが、黒衣の男が瞬時にその動きを封じる。
その目には、確かな殺意と計算が光っていた。
「あなたがたの足掻きは、無駄です。」
黒衣の男の言葉に、総司は必死に体を動かし、抵抗を試みる。
だが、その力は次第に抑え込まれ、動けなくなっていった。
「総司!!」
近藤も必死で駆け寄ろうとするが、またしても妖兵たちに阻まれ、足を止められた。
「――行かせて! その子は私のものだ!」
黒衣の男は総司の身体を、まるで手のひらに乗せるように空中で保持したまま、冷酷に言い放った。
「お前――何をするつもりだ!?」
土方が叫び、怒りの眼差しを黒衣の男に向ける。
だが、その視線すらも、黒衣の男には届かない。
「何も――」
男は微笑んだ。
「ただ、少しばかり"引き取る"だけです。」
その瞬間、総司の体が一気に引き寄せられ、黒衣の男の腕の中へと消えた。
すべてが瞬時の出来事だった。
「総司!!!!!」
沖田総司が、黒衣の男の腕の中で無力に振り回される。
その姿は、まるで何かに引き寄せられるように、抗うことなく沈み込んでいく。
「離せ!!!」
土方が再び刀を振り上げ、その身を飛ばしていく。
だが、黒衣の男は一度も動かず、そのまま総司を連れ去る準備を進めている。
「あなたの力は、もう私のものです。――さぁ、行きましょう。」
黒衣の男は言った。
総司の目がぼんやりと、まるで意識を失いかけたかのように揺れていた。
その目に浮かんだのは、心のどこかでかすかな疑念と、恐れの色だった。
「…………」
だが、黒衣の男がそのまま総司を抱え上げ、瞬時に周囲に見えない力を放った。
その力に包まれたまま、総司は一気にその場を消え去った――
その後、残された者たち
「――くっ!」
土方が拳を握りしめる。
自分の目の前から、大切な仲間がさらわれていった。
その怒りと無力感が、胸を締め付ける。
「総司……」
斎藤一が無言でその場に立ちすくむ。
今までの冷静な態度とは裏腹に、彼の目には深い憂いが浮かんでいた。
「――大丈夫だ。総司は必ず戻る。」
近藤の声が、かすかに震えていた。
だが、彼の言葉に力はない。
「黒衣の男――」
土方は強い口調で言った。
「このまま放っておくわけにはいかねぇ。総司を取り戻すまで、何が何でも戦う。」
「その通りです。」
桂が、今度は真剣な表情で言う。
「幕府の妖兵、黒衣の男――そしてその背後にいる真の黒幕。
全てを暴き、総司を取り戻すために戦うのです。」
「……わかってる。」
土方は力強く言うと、視線を空に向けた。
「……待ってろ、総司。必ず助けに行く。」
その言葉に、全員の決意が凝縮される。
そして、彼らは一斉に動き出した。
その先に待ち受ける者が何であろうとも、
"新選組" の絆を信じ、彼らは進み続ける――


