「――行きます。」
沖田が微笑むと同時に、足元がふっと消えた。
「なっ……!」
闇ノ徒の将が目を見開いた瞬間、沖田はすでに懐へと入り込んでいた。
「焔閃――」
振り下ろされた木刀が、狐火をまといながら妖の身体を裂く。
ズバァァン!!
「ぐぅっ……!」
闇ノ徒の将は大きく後退し、胸元を押さえた。そこには焦げた傷跡が残っている。
「……なるほど、確かに貴様の炎は特別らしい。」
「そりゃあ、"大狐"の力ですからね。」
沖田はひらりと木刀を回しながら、冷たい笑みを浮かべる。
「さて、もう少し焼いてあげますよ。」
「調子に乗るなよ、妖狐風情が!!」
闇ノ徒の将は手を掲げると、黒い霧が渦巻き始めた。
――次の瞬間、霧が刃となって沖田を襲う。
ズシャアッ!!
「くっ……!」
沖田は身を翻して回避するが、かすった部分が黒く変色し、鋭い痛みが走る。
(これは……瘴気の刃……!)
「ふっ……どうした?"払い屋"を名乗るなら、もっと粘ってみせろ。」
妖が嗤う。
だが――
「……えっと、ちょっと痛いですけど。」
沖田は軽く腕を振り、狐火を灯した。
「燃えろ。」
狐火が黒い傷跡を焼き尽くし、瞬く間に瘴気が消えていく。
「なっ……!」
「この炎は、僕のモノですから。」
沖田は一歩踏み込み――
「終わりです。」
――焔閃・終ノ型
木刀が振り抜かれると、妖の体が一瞬にして炎に包まれた。
「ぎゃああああああ!!!」
闇ノ徒の将が、断末魔の悲鳴を上げる。
その身体は徐々に灰へと変わり――
ついに、完全に消滅した。
静寂
炎が消え、辺りは静けさを取り戻した。
「……終わりましたね。」
沖田は深く息をつく。
「総司……お前、本当に……」
土方が呆然としながら、沖田の姿を見つめる。
妖狐――それは、討つべき存在だった。
だが目の前にいるのは、間違いなく沖田総司だった。
「……お前、本当に総司か?」
その問いに、沖田は微笑んで答えた。
「はい。僕は、沖田総司ですよ。」
――たとえ、"妖狐"になってしまったとしても。
この命が尽きるその時まで、新選組の剣士であることに変わりはないのだから。


