超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

「なんであのときキスしたの?」

「え?」

「忘れちゃった?」

「いや、もちろん覚えているけど」

まだ出会ったばかりの頃、アンセムはテラスを喜ばせようとここへ連れてきたのだ。
そのときに、無防備なテラスの笑顔に吸い込まれるように、キスをしてしまったのである。

「どうしてと聞かれてもな…」

返答に困るアンセムだった。
何か意図があったわけではないのだ。

「アンセムにとっては普通のことだったの?あの頃のアンセムは、誰でもすぐキスしちゃってたとか」

「いや、それはないよ」

アンセムは否定した。
求められれば応じることも多かったが、自らというのは、しかも、することで相手を怒らせるとわかっているのにキスするはずがない。

「じゃあ、どうして?」

アンセムは考え込んでしまった。

あのときのキスは良く覚えている。
自分の行動に自分でも驚いていたからだ。

「もしかしたら、あのときにはもう、テラスに特別なものを感じていたのかもしれないな…」

それは呟きだった。
テラスは目をパチクリ。

「いや、別に今そんなサービストークいらないんだけど」

「……本音だよ」

「うっそだ~」

納得いかない様子のテラス。

「テラス、オレを何だと思ってるんだ?」

「だって、本当に出会ってすぐだったじゃん。特別も何も、お互いのこと何も知らないに等しい時期だったよね」

「そうだけど、オレは最初に会ったときから、テラスと過ごす時間が好きだったよ」

「本当に?」

「テラス…そんなに疑わしそうな目で見るの止めてくれないか?」

「あまりにも都合良いこと言うから」

「本当だから仕方ない」

アンセムは肩をすくめた。

「そうなの?」

「そうなんだ」

「ふ~ん…」

テラスはなんでもないような相槌を打ちながらも、嬉しい気持ちになっていた。
それをあっさり見抜くアンセム。
本当に、テラスは感情を隠すのが下手だ。
そこがまた、愛しい。
アンセムはテラスにキスをした。