「別に話は逸れてないぞ。そういうアンセムが僕の後任を頼む決め手になったんだ」
「よくわかりません」
アンセムにはカイが言わんとすることが理解できなかった。
「人の気持ちってのはなぁ、最終的には相手のためにどれだけ一生懸命になれるかってのが大事なんだ。その恋が成就しなかったとしても、恐れず、手を抜かず、偽らなかった気持ちは自分の中で大切な宝になる。
ここはある意味過酷だからな。寮生たちは時に傷つき、立ち直れないときもある。それを励ましたり受け止めてやるのも、僕たちの仕事なんだ。
そして、そういう役割は、自分が全力で恋愛をした者でなければ力不足だ。想像だけの言葉なんか、本気で傷ついているやつには届かないからな。
それに、楽をした者には、全力でぶつかって玉砕した者の気持ちに寄り添えない。恋愛は理屈じゃなく、感情だからだ。
ここにいる大人たちは、神の子としての義務を果たすために働いているが、同時に、寮生たちを心から応援している。僕もそうだ。
だから、テラスを好きになったアンセムに託したいと思ったんだよ」
カイは真剣に語った。
こんな真面目な顔を、アンセムは初めて見たように思う。
(どう答えれば…)
咄嗟にアンセムは言葉が出なかった。
「ま、じっくり考えてくれ。
アンセムは品種改良の分野でも期待されているからな。僕の後任にと提案したとき、研究室から物凄い反発を食らったんだ」
カイはいつもの軽い調子で付け足した。
「自分の進みたい道を選べばいい。誰も押し付けなどしない。
僕がここに勤めたきっかけは、僕の前任から後任の打診があったからだが、決めたのは自分だ」
「そうだったんですか…」
「よくわかりません」
アンセムにはカイが言わんとすることが理解できなかった。
「人の気持ちってのはなぁ、最終的には相手のためにどれだけ一生懸命になれるかってのが大事なんだ。その恋が成就しなかったとしても、恐れず、手を抜かず、偽らなかった気持ちは自分の中で大切な宝になる。
ここはある意味過酷だからな。寮生たちは時に傷つき、立ち直れないときもある。それを励ましたり受け止めてやるのも、僕たちの仕事なんだ。
そして、そういう役割は、自分が全力で恋愛をした者でなければ力不足だ。想像だけの言葉なんか、本気で傷ついているやつには届かないからな。
それに、楽をした者には、全力でぶつかって玉砕した者の気持ちに寄り添えない。恋愛は理屈じゃなく、感情だからだ。
ここにいる大人たちは、神の子としての義務を果たすために働いているが、同時に、寮生たちを心から応援している。僕もそうだ。
だから、テラスを好きになったアンセムに託したいと思ったんだよ」
カイは真剣に語った。
こんな真面目な顔を、アンセムは初めて見たように思う。
(どう答えれば…)
咄嗟にアンセムは言葉が出なかった。
「ま、じっくり考えてくれ。
アンセムは品種改良の分野でも期待されているからな。僕の後任にと提案したとき、研究室から物凄い反発を食らったんだ」
カイはいつもの軽い調子で付け足した。
「自分の進みたい道を選べばいい。誰も押し付けなどしない。
僕がここに勤めたきっかけは、僕の前任から後任の打診があったからだが、決めたのは自分だ」
「そうだったんですか…」



