超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

「アンセムさんは、どこまでも優しいですね。
自主規制しないと女の子がほっとかないから、テラスさんからあらぬ誤解を受けますよ」

茶化して誤魔化した。

「気をつけるよ」

穏やかな笑顔で頷くアンセム。
自分に向けられた笑顔は、テラスへの笑顔と違う種類のものだとナミルは理解した。
それでも、嬉しかった。

「あの、また勉強でわからないところがあったら聞いてもいいですか?」

恋人になることは諦めた。
だけど、妹分としてでいいから、側にいたい。

「もちろん。オレで良ければ」

アンセムは快諾した。

「ありがとうございます」

ナミルは嬉しくなって、また泣きたくなった。

「じゃあ、私、奥に行ってきますね」

涙が溢れる前に、アンセムにくるりと背を向けて歩き出す。

「ナミル、ありがとう」

後ろからアンセムの声が聞こえた。

(もうだめ…)

ナミルは走り出した。
涙が溢れて止まらない。
奥へ奥へと走り、自分の声がカウンターに届かない位置まできて嗚咽をもらすナミル。

まだ胸は苦しいけど、自分でこの恋を終わりにすることができた。
本気で好きになった初めての人に、最後に自分の気持ちをちゃんと伝えることができた。
そして、その人は、気持ちには応えてはくれなかったけど、そんな自分を優しく受け止めてくれた。

(失恋は辛いけど、それでもアンセムさんを好きになって良かった)

ナミルは、心からそう思った。