超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

「おい!ちゃんと聞いてるのかよ」

「え?」

「え?じゃねーだろっ!」

「ごめんなさい…」

(あの色男がそんなに気になるのか?)

その言葉をシンはギリギリで飲み込んだ。
以前ナミルに自ら約束したのである。
アンセムのことは口に出さないと。
ナミルは謝ったきり、下を向いて黙り込んでしまった。

(シンに教えてもらっているのに、全然集中できない…)

扉の向こうで、アンセムとテラスが2人で過ごしている。
何をしているのか、何を話しているのか、どうしても気にしてしまう。
勉強に集中したいのに、自分で自分が止められない。
シンが大きなため息をついた。

(また怒鳴られる)

ナミルは更に憂鬱な気分になった。

「仕方ねーな。大分早いけど、昼飯にすっか?」

「え?」

予想外の発言に、ナミルは顔を上げる。

「それとも、今日はここまでか?」

シンは怒っていないようだ。
少し困った顔をしている。

「いえ、やるわ」

「やる気ねーときに頑張っても無駄だぜ」

なぜだろう。嫌味には聞こえない。
むしろ、言葉の裏に思いやりを感じるのは気のせいだろうか。

「シン、気を使ってるの?」

「は!?誰がおめーなんかに!」

思いっきり否定する割に顔が赤い。
ナミルは思わず笑ってしまった。

「なんだよ」

今度は憮然とするシン。
不覚にも、ナミルは可愛いと思ってしまった。

(そっか。こいつって、子供なんだ)

同年代と思うから腹が立つ。
5~6歳の男の子だと思えば、いちいちシンの言葉にカチンとせずに済むかも。
ナミルはそんなことを思い、益々愉快な気持ちになった。

「早いけど、ご飯行きましょう」

子どもだと思えば余裕だ。
ナミルは荷物をまとめて立ち上がった。
いきなり明るい笑顔になったナミルにシンは混乱した。

(女って、わけわかんねー!)

しかし、笑っているのだから良しとしよう。
どうにもナミルの憂いた顔は落ち着かない。
シンは無理矢理そう考えることにした。