「テラス!」

1日の授業が終わると、逃がすものかと速攻シンが声をかけてきた。
テラスは片付けの手を止めずに顔を上げる。

「なに?」

「朝の話の続き」

「朝の?」

「だから、あの女を近寄らせないと思うってやつの続きだよ」

結局お昼休みは最後まで4人で過ごし、テラスと2人で話をする時間がなかったのだ。

「あ、ああ…」

自分の発言を思い出して、テラスは曖昧に返事をする。

「テラス、帰らないの?」

リリアが声をかけてきた。

「ちょっと用があるんだ」

多分、シンは他の人に話を聞かれたくないんだろう、そう思ったテラスはリリアに手を振った。

「そう、じゃ、また明日ね」

最初はテラスに対するシンの当たりが強くて心配していたリリアだったが、結局シンはテラスに敵わないことがわかったので、安心して手を振り返す。

「で、どういう意味だよ」

リリアが教室を出るのを待って、シンはもう一度聞いた。

「え~と、ユキさん…だったよね。彼女のこと本当に嫌だったらね、接近を許さないと思うんだよね。逃げようと思えば、もっと逃げ回れるでしょう?」

「なんだよ。俺が本当は喜んでるとでも思ってんのか?」

「それは全く思ってないけど」

「じゃあ、なんなんだよ」

「嫌いではないのかな、って」

「はぁ?」

テラスが言おうとしていることがシンはわからない。

「好きじゃないから嫌いってわけじゃないでしょう?」

「ああ…まあそうだけど。っつーか、どうでもいい。興味ねぇ」

「うん」

「で?」

「で?と言われても、続きはそれだけだよ」

「なんだ、それだけか」

拍子抜けするシン。

「ってことで、帰ろ」

テラスは席を立った。