超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

「で、何をそんなに不貞腐れているんだ?」

もう一度聞かれた。
カイを見ると、鋭い視線で睨まれた。
いつもの陽気で飄々としたカイではない。

「オレは…」

その続きが出ない。

「やっぱりアンセムには覚悟が足りないようだな。テラスにはあるようだが」

「何の覚悟ですか?教えて下さい。お願いします」

アンセムは深く頭を下げた。

「傷つく覚悟だ」

傷つく?
どういう意味だろうか。
アンセムにはわからなかった。

「好きな女の子と付き合うのは楽しいよなぁ。
でもな、楽しいだけじゃないことも、あるわな。
相手のわからないところも、あるだろうな。
相手への気持ちが大きければ大きいほど、見返りを求めたくなるよな。
全て受け止めてもらえたら最高かもしれんが、そうなるかどうかは、訴えてみなければわからないだろうな。
大切な人ができるってことは、常に大切なその相手を失うリスクを背負うってことでもあるだろう」

何が言いたいのだろうか。
カイの言葉の意味を懸命に考えているのに、アンセムにはわからない。

「好きな相手の気持ちが見えなくなることほど、恐いもんはないだろうなぁ」

ああ、そうだ。
テラスの気持ちが見えない。
それが辛かった。

「だけどな、アンセム」

カイは真っ直ぐアンセムを見る。

「恐いからと言って逃げるな」

カイの言葉がアンセムに突き刺さる。
テラスが離れることを恐れているのに、自分から逃げている。