「会わないようにしようってアンセムが言ったんじゃないか。
今更そんなこと言うなら、最初から会わないとか言わなきゃいいじゃん!」

「オレが悪いのか…」

「違う、私が悪いんだよ。言ってないことがあるのは本当だし」

苦しい苦しい。胸が苦しい。
こんなに辛いことがあるだろうか。
ルイザはきちんと話せと言ったけど、こんな態度を取られて、どう打ち明ければ良いというのだ。

「何が言えないっていうんだ」

「アンセムだって、言ってないことあるくせに!」

「なんのことだ?」

「ミユウさんとキスしたんでしょう?人づてに聞いたんだから」

噂となって広まっていたことだから、テラスの耳に入って当然だった。
なのに、アンセムは動揺した。リーオンのことは気遣えても、なぜかテラスのことに気が回らなかった。
もしかしたら、テラスに嫉妬してほしかったのかもしれない。
しかし、いざテラスから泣きながら責められると、アンセムは咄嗟に言葉が出なかった。

「誰に…」

アンセムの反応に、事実であると確信するテラス。

「ルミって人だよ。私、あの人大嫌い!」

テラスは気持ちがグチャグチャだ。
なぜそこにルミの名前が出てくるのか、アンセムには疑問だった。