やっとテラスに会えたアンセムは、衝動のままに抱きしめキスをしたが、激しく拒否されて冷静ではいられない。
どうして受け入れてくれないのか。
アンセムはもう一度テラスにキスをしようと顔を近づけた。

「ヤダヤダ!触んないでよ!」

しかし、その言葉で動きが止まる。
テラスは急いでアンセムから離れた。

「無理矢理こういうの、やだよ。どうしたの?私を探してたんでしょう?
何かあったの?説明して、アンセム」

「説明?」

アンセムは自虐的に笑った。

「恋人に会うのに理由がいるのか?」

「は、はぁ!?会わない方がいいって言ったの、アンセムだよ?」

テラスにとって、アンセムの発言は突拍子のないものだった。

「それはテラスがオレの申し出を断ったからじゃないか」

「え?申し出ってなに?」

「オレは一緒にいて守りたいと言った。テラスはそれを拒否しただろ」

「だって、付き合いを隠してるんだから、一緒に行動するのは不可能じゃない」

「それでもオレが守りたかった。どうしてシンなんかに…!」

「な、なんでシンが出てくるの?」

全く話が見えないテラス。

「あの男から聞いたんだ。カイさんが呼んだんだって」

(またシンは余計なことを…)

テラスはシンを恨んだ。

「アイリからも聞いた。酷い嫌がらせがやっぱりあったんだな。どうしてオレに話してくれないんだ」

「ご、ごめんなさい…」

「すぐに教えてくれって言ったはずだ。テラスも相談すると言っていた」

確かにそうだ。テラスも覚えている。
だけど、その後に起こった出来事は、テラスの想定をはるかに超えていた。話せないと思った。