「それじゃ、私は戻るわね。寮長にもきちんと報告しておくから」

「本当に、色々とありがとうございました」

「テラス」

「なんですか?」

「アンセムがまたあなたのことを見てるわよ」

ルイザは離れたところにいるアンセムを見た。

「ああ、なんだか私を探していたらしいです」

「そう。
ねえ、テラス。あなたはアンセムのために1人で頑張ってるけど、もっと彼に甘えることも大切だと思うわ」

ルイザにそう言われて、テラスは今までアンセムから言われた言葉を思い出した。
もっと甘えてほしい。頼ってほしい。アンセムは、そう言っていた。

「彼、とても不安そうな顔してる。今回のことも話してないんでしょう?」

「はい。だって、心配かけるだけですから…」

「内緒にしておくほうが、相手を苦しめることもあるのよ」

その言葉に無言になってしまうテラス。

「今日の夜にでも、ちゃんと話してあげてね」

ルイザはそう言い残し、食堂を出て行った。とにかく今日やるべきことは終わった。
テラスはアイリとライキスに断って、1人で先に帰ることにした。
正直、これ以上アンセムとミユウのツーショットを見るのはキツい。
アンセムから度々送られる視線にも困惑した。
ルイザにきちんと話すように言われたが、そんな心境にはなれなかった。
トボトボと歩くテラス。

(なにやってんだろう、私…)

たった数日で随分と自分とアンセムを取り巻く環境が変わってしまったように思う。
どうしてこうなっちゃったんだろう。
考えても答えは出なかった。