超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

「それは本心なのか?」

『もちろん。むしろ、ミュウの願いだと思って、恋人のフリをしてほしい』

絶句するアンセム。

「…理解できない。どうしてそんなことを言うんだ?」

『僕にもミュウにも、色々と考えているところがあるんだ。
僕たちは、この作戦に大賛成だ。アンセムも噂が誤解だと思われた方が好都合じゃないのか?』

「それはそうだけど…」

『じゃあ、何も問題はないじゃないか』

「本当にそれでいいのか?」

『ああ。ミュウの好きなようにさせてあげてほしい』

アンセムは暫く考え込んだ。

『頼むよアンセム』

「…わかった」

結局押し切られるように了承してしまった。

『良かった』

「とりあえず、明日の朝食から一緒に行動する事になっているんだ」

『ああ、やっぱりそうか』

「本当にフリだけだから」

『当たり前だろ』

「何か思うことがあったら、すぐ言ってくれよ」

『そんなに気を回す必要ないって。僕は大丈夫だから。噂、早くなくなるといいな』

「本当に、ありがとう」

『アンセム、なんか別人みたいだな』

「え?どこか変か?」

『感じが変わった。なんとなく、な』

「そうか?」

『愛の力ってやつか?たまにはゆっくり語り合おう』

「そうだな」

『んじゃ、また。おやすみ』

「ああ。おやすみ」

そしてアンセムは受話器を置いた。
本当にこれで良いのだろうか。
そうだ。テラスに電話をしなければ。
もう一度受話器に手を伸ばした。
しかし、途中でその手を止める。
何かあればすぐに連絡をくれるとテラスは言っていた。
少し待ってみようか。そんなことを思った。

アンセムはとりあえず寝る準備をしてシャワーを浴びた。
それでも電話はかかってこない。
部屋の片付けなどをしていたら、10時を過ぎてしまった。
普段ならテラスはそろそろ寝る時間だ。

酷く落ち込んでいる自分に気付く。
結局その夜、電話をかけることなく、アンセムは寝てしまった。